
新垣隆作編曲の音楽劇『シミグダリ氏〜鉄靴の姫と麦粉の王子〜』は、東京文化会館が小学生と中学・高校生向けに企画している「シアター・デビュー・プログラム」の一つとして2023年8月に同会館小ホールで初演された。脚本・演出は久恒秀典。ギリシャの昔話に基づく、イリヤ姫と彼女が麦粉と砂糖とアーモンドで作った恋人・シミグダリ氏の物語。
今回は、会場を渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールへ移して、久恒の新演出で再演される。キャスト3人とピアノ三重奏での上演。音楽は、ベートーヴェン、ラモー、ハイドンの作品も使われるが、多くは新垣によるオリジナル。童謡風の歌、アリア、二重唱、三重唱もあり、オペラ(ジングシュピール)に近く、親しみやすい旋律にメロディ・メイカーとしての新垣の才能を聴くことができる。イリヤ姫をミュージカルで活躍する田代明(あかり)が演じ、シミグダリ氏をバリトンの大久保惇史が歌う。元宝塚歌劇団の月影瞳が初演に続いて金の女王という特異なキャラクターを演じるのも見どころ。ピアノ三重奏は初演と同じ、作曲者自身のピアノ、ヴァイオリンの岸本萌乃加、チェロの加藤文枝の三人。ヴァイオリンの技巧的なソロも披露される。小学生向けに企画された音楽劇ではあるが、子どもだけでなく大人も楽しめる。休館中の東京文化会館から発信される今回のプロダクションがどうバージョン・アップされているかにも注目だ。
文:山田治生
(ぶらあぼ2026年7月号より)
Music Program TOKYO シアター・デビュー・プログラム
⾳楽劇『シミグダリ氏~鉄靴の姫と麦粉の王子~』(新演出)
2026.8/7(金)19:00、8/8(土)14:00 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
問:東京文化会館チケットサービス03-5962-1788
https://www.t-bunka.jp

山田治生 Haruo Yamada
音楽評論家。1964年、京都市生まれ。1987年慶應義塾大学経済学部卒業。雑誌や演奏会のプログラム冊子に寄稿。著書に「トスカニーニ」、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方 」、編著書に「戦後のオペラ」、「バロック・オペラ」、「オペラガイド」、訳書に「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」などがある。
