第一生命ホール25周年記念 室内楽ガラ・コンサート──矢部達哉、葵トリオらゆかりの音楽家が開館記念日に集う

 25周年を迎えた第一生命ホールが、記念の「室内楽ガラ・コンサート」を、開館記念日の11月15日に開催する。

 晴海トリトンスクエア内の室内楽を中心とするコンサートホールで、計767席、豊かでクリアな音響をもち、少人数の演奏でも広い空間に無理なく鮮明な音が響きわたる。2管編成規模の室内オーケストラにとっても楽に演奏できる音響で、聴衆にも出演者にも理想的な演奏空間。開館から四半世紀、今世紀の東京の室内楽の名舞台となってきた。

左より:小倉貴久子/川口成彦 ©Taira Tairadate/﨑谷直人 ©Tomoko Hidaki

 11月のガラはこのホールにゆかりの深いアーティストたちが集い、趣向を凝らした組み合わせと演目を聴かせる、3部にわたる約2時間半のコンサートとなる。

 第1部はフォルテピアノの共演で、小倉貴久子と川口成彦によるモーツァルト「2台のフォルテピアノのためのソナタ K.448」。同ホールはピリオド楽器とも相性がよい。音楽の歓びあふれる名品を、

楽器とホールを知りつくす名手たちの演奏で。ガラの開幕にふさわしい1曲だ。

 第2部は若きアーティストたちを中心に。まず「ウェールズ・アカデミー」修了生たちのステージ。同アカデミーはコロナ禍中に開始された企画で、このホールで多くの舞台を重ねてきたウェールズ弦楽四重奏団メンバー4人が講師役を務め、彼らならではの丹念な指導で、若き音楽家たちの成長に貢献している。この日は修了生7人がホールに戻ってきて、ウェールズ第1ヴァイオリン﨑谷直人と共にメンデルスゾーンの弦楽八重奏曲第1楽章に取り組む。アカデミーの成果とその後の成長ぶりが伝わる1曲になるだろう。

葵トリオ ©masatoshi yamashiro

 続いて葵トリオが登場。日本の若い世代を代表する存在であり、世界に誇るべき人気トリオ。室内楽名ホールのガラで3人が奏でるのは、ブラームスのピアノ三重奏曲第3番。しかも全楽章。彼らのブラームスとなれば室内楽愛好家は聴き逃せない。この日の中心に置かれた1曲は、聴きごたえ十分の濃密な時間となる。

 第3部は同ホールを語るに欠かせないベテラン演奏家たちが、室内楽の集中した世界と遊び心の両面を見せてくれる。

左より:矢部達哉 ©大窪道治/池松 宏/店村眞積 ©MeisterMusic,_米田泰久

 第一生命ホールを代表する企画となった「トリトン晴れた海のオーケストラ」。コンサートマスター矢部達哉を中心に、指揮者なしの室内オーケストラとしてベートーヴェン交響曲全曲などに継続して取り組み、コロナ禍中の「第九」はメディアでも大きく取り上げられ、全国的な注目を集めたことは記憶に新しい。ガラにはその矢部と、コントラバス首席で同団の顔のひとりである池松宏が出演。しかも池松はチェロでの参加! ヴィオラの名匠・店村眞積、さらに葵トリオの小川響子(ヴァイオリン)と伊東裕(チェロ)との共演で、シューベルトの弦楽五重奏曲から、深遠な美しさをもつアダージョ楽章を弾く。池松はこの楽章を愛するあまりチェロへの挑戦を始めたとのこと。もちろんこのメンバーで手すさびで終わることはあり得ず、名演奏家たちの“真剣な愉しみ”を楽しみたい。

クァルテット・エクセルシオ ©大窪道治

 ガラの最後の2曲は、クァルテット・エクセルシオが受け持つ。日本で希少だった専属の弦楽四重奏団として、このジャンルをリードする存在であり続け、このホールに最も出演を重ねてきた団体のひとつでもある。まず、弦楽四重奏曲の深淵を象徴する1曲として、ベートーヴェンの特殊な傑作「大フーガ」を。そしてラストは葵トリオの秋元孝介(ピアノ)との共演で、ドヴォルザークのピアノ五重奏曲の第1楽章。名旋律と活力あふれる人気作で、ガラ・コンサートが華やかに締めくくられる。

文:林 昌英

(ぶらあぼ2026年8月号より)

第一生命ホール25周年記念 室内楽ガラ・コンサート
2026.11/15(日)15:00 第一生命ホール
問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
https://www.triton-arts.net


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。