
横浜みなとみらいホールの夏休み企画「みなとみらい遊音地」、4日間にわたるこどもフェスタのスタートを飾るのが「こども・くらしっく〜こころとからだで音を楽しむコンサート〜」だ。ヴァイオリニストの松田理奈とピアニストの實川風が届ける「全身で音を感じる」1時間のプログラム。「子どもと音楽」について、母親としての自身の育児経験も活かしながら企画にあたったという松田に話を聞いた。
「CDやテレビからは伝わりきらないであろう、マイクを通さない楽器の生の音、そこから生まれる振動を体感してほしいという思いから、ホールのスタッフの皆さんと一緒に企画を考えました。私はいつもコンサートのとき裸足で演奏しているのですが、ヴァイオリンを弾くとホールが共鳴して、ステージの板をつたって踵からじわっと振動が伝わってくるんです。オーケストラと共演したときなんて、もう足の裏がビリビリするぐらい。今回は贅沢にも横浜みなとみらいホールの大ホールでのコンサートということで、子どもたちにもその振動を感じてもらいたくて、ステージに上がって聴ける時間を設けました」
實川は2018年の横浜市招待国際ピアノ演奏会の出演者でもあり、横浜みなとみらいホールとの縁も深い。
「實川さんとはこれまで何度も共演してきましたが、作曲家へのリスペクトがあったうえで、自分はこう感じているよ、という解釈を自然に提示するあり方が素敵で、いつも刺激をいただいています。音楽に対してまっすぐで、ピュアなお人柄が、音を通して子どもたちにも伝わると思いますし、なにより楽器の鳴らし方が素晴らしい。ピアノが生き生きしているのがわかるんですよね」
プログラムは、エルガー「愛の挨拶」からはじまり、バッハ「G線上のアリア」、サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」、最後のモンティ「チャルダッシュ」など、誰もがどこかで聴いたことのあるクラシックの名曲が並ぶ。松田にとって、とくに思い入れのある曲は?
「クライスラーは大好きなので、『前奏曲とアレグロ』と『テンポ・ディ・メヌエット』の2曲を入れました。クライスラーを弾くと、すぐに楽器が鳴り出すんです。自身もヴァイオリンの名手だったクライスラーは、楽器が共鳴するポイントを知っているのでしょうね。ヴィターリの『シャコンヌ』は少し長いので子ども向けコンサートではあまり演奏されませんが、幼稚園で演奏すると子どもたちが毎回真剣に聴いてくれるんですよ。不思議な魅力のある曲だと思います」
子どもだけでなく、大人も一緒に音の響きと振動を浴びるひとときをぜひ体験してほしい。
取材・文:原 典子
(ぶらあぼ2026年7月号より)
横浜みなとみらいホール こどもフェスタ みなとみらい遊音地
こども・くらしっく~こころとからだで音を楽しむコンサート~
2026.8/6(木)11:00 横浜みなとみらいホール
問:横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000
https://yokohama-minatomiraihall.jp
※イベントの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

原 典子 Noriko Hara
音楽ジャーナリスト/編集者/ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、フリーランスに。坂本龍一監修の音楽全集『commmons: schola』の編集を担当。2021年にWebメディア『FREUDE』を立ち上げる。アーティスト・インタビューやレビュー記事執筆のほか、公演プログラムや企業オウンドメディアの編集、コンサートの企画運営などを行なっている。鎌倉在住。
https://freudemedia.com
