
右:ピョートル・アンデルシェフスキ ©Simon Fowler
シベリウスに始まりシベリウスに終わる。ハンヌ・リントゥと読響との初顔合わせとなるプログラムだ。
リントゥは指揮者王国フィンランドの出身。サロネン、オラモ、ヴァンスカ、インキネン、ロウヴァリ、マケラ同様にシベリウス音楽院のパヌラのもとで学んだ、今もっとも脂が乗りきった実力派指揮者だ。
シベリウスの交響詩としては、知名度の割には、あまり演奏会ではお目にかからない「ポホヨラの娘」で演奏会は始まる。読響の金管セクションの活躍も聴きどころだ。
そして、ピョートル・アンデルシェフスキを迎えてのバルトークのピアノ協奏曲第3番。作曲家が最晩年に書いた、ロマン派への回帰をも思わせる調性感も強い協奏曲から、ポーランドを代表するピアニストは民族的なエッセンスを鮮やかに引き出してくれるのではないか。
後半は、2年前に亡くなったフィンランドの作曲家サーリアホの「冬の空」。凍てついた空気と、重くのし掛かった鉛色の厚い雲を描いたような、北欧の風景が目に浮かぶような音楽だ。
そのランドスケープは、最後に演奏されるシベリウスの交響曲第7番にも繋がっていく。自然の厳しい風景を描いたサーリアホ作品から、それが心のなかに入り込んだようなシベリウス作品という流れが秀逸。精緻にして情熱的な演奏を期待したい。
ちなみに、このプログラムの後半は、リントゥが昨年ベルリン・フィルにデビューしたときとまったくの同一。いわゆる「勝負プログラム」を携えて読響の指揮台に立つ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年11月号より)
【出演者変更】
指揮者のハンヌ・リントゥは、本人のやむを得ぬ事情により、出演することができなくなりました。
代わりまして、ピエタリ・インキネンが出演します。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。(11/10主催者発表)
ハンヌ・リントゥ(指揮) 読売日本交響楽団 第653回 定期演奏会
2025.11/27(木)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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