INTERVIEW ピエール・デュムソー
フランスの俊英が京響、群響、OEKの指揮台に登場!

©Edouard Brane

 1990年、フランス生まれの指揮者、ピエール・デュムソーが来る10月に5回目の来日を果たし、京都市交響楽団、群馬交響楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の指揮台に立つ。名曲から秘曲まで、得意のフランス音楽を織り交ぜた3つの異なるプログラムを披露する予定だ。

 京響では没後50年を迎えるショスタコーヴィチの交響曲第10番とともに、ピエルネの劇音楽「ラムンチョ」序曲と、サクソフォン奏者の上野耕平をソリストに迎えてトマジの「バラード」が演奏される。

 「ショスタコーヴィチの代表作である交響曲第10番はもちろんですが、京都のお客様にフランスでも滅多に演奏されないピエルネとトマジの作品も聴いていただけることをとても嬉しく思っています。優れた指揮者であったピエルネの多彩なオーケストレーションとバスク地方の香りを存分に堪能できる『ラムンチョ』序曲のほか、コルシカ島にルーツを持つ作曲家、トマジがマルセル・ミュールのために書き上げた『バラード』を、日本を代表するサクソフォンの名手、上野耕平さんと演奏します。映画音楽を多く手がけたトマジの抒情性が活きた作品で、管弦楽版の実演は本当に貴重です」

 群響とのプログラムでは、生誕150年となるラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲と「ボレロ」に、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」と武満徹の「弦楽のためのレクイエム」、そして現代フランスの作曲家、ペリーヌとワクスマンによるアコーディオンと管弦楽のための作品が組み合わされる。ソリストは作品の初演者である、アコーディオンの才人、フェリシアン・ブリュが務める。

 「『レクイエム』で、初めて武満の作品にチャレンジします。最初に指揮するのが日本のお客様の前というのは少し緊張しますが、私にとって忘れ難い時間となるでしょう。このプログラムでは、ドビュッシーとラヴェルの傑作と併せて、21世紀のフランス音楽も聴いていただきます。ペリーヌの『カプリス』とワクスマンの『時の島』はどちらもブリュのために作曲されましたが、ふたつの作品のインスピレーションの源は大きく異なっています。ペリーヌは、20世紀初頭にパリで流行したアコーディオンを伴うポピュラー音楽“ミュゼット”にオマージュを捧げ、いくつものシャンソンを引用しています。一方ワクスマンは、古代エジプトの神秘的な世界をアコーディオンとオーケストラで巧みに描いています。私とブリュは、この2曲のレコーディングにも取り組んでおり、今回日本の皆さまにもこれらの作品をご紹介できるのを楽しみにしています」

 OEKとは2019年、2023年に続き3回目の共演となる。すでに気心が知れたOEKとの公演では、グノーの歌劇《ファウスト》のバレエ音楽とストラヴィンスキーの「火の鳥」組曲(1919年版)、そして今もっとも人気のあるピアニストのひとり、務川慧悟と共にプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を演奏する。

 「OEKはいつも私をあたたかく迎え入れてくれます。過去2回の共演では主にフランス音楽を取り上げましたが、今回はそこにロシア音楽の要素が加わります。19世紀のフランスにおいて、伝統的なグランド・オペラの一部をなしていたバレエが、20世紀初頭により先進的なジャンルへと発展していった、その変遷とコントラストを味わっていただくプログラムです。輝かしい才能に溢れた務川さんとは、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を演奏しますが、プロコフィエフもまた、バレエ音楽の歴史に重要な足跡を残した作曲家でした。過去2回の共演での成果を踏まえて、OEKとさらに充実した音楽を探求したいと思っています」

取材・文:八木宏之

(ぶらあぼ2025年10月号より)

ピエール・デュムソー出演公演
京都市交響楽団
第705回 定期演奏会 
2025.10/11(土)14:30 京都コンサートホール
オーケストラ福山定期 Vol.10 
10/13(月・祝)16:00 広島/ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ
問:京都市交響楽団075-222-0347 
https://www.kyoto-symphony.jp

群馬交響楽団
第612回 定期演奏会 
2025.10/18(土)16:00 高崎芸術劇場
東京定期演奏会 
10/19(日)15:00 すみだトリフォニーホール
問:群馬交響楽団事務局027-322-4944 
https://www.gunkyo.com

オーケストラ・アンサンブル金沢
第498回 定期公演フィルハーモニー・シリーズ
2025.10/24(金)19:00 石川県立音楽堂 コンサートホール
問:石川県立音楽堂チケットボックス076-232-8632 
https://www.oek.jp


八木宏之 Hiroyuki Yagi

青山学院大学文学部史学科芸術史コース卒。愛知県立芸術大学大学院音楽研究科博士前期課程(修士:音楽学)およびソルボンヌ大学音楽専門職修士課程(Master 2 Professionnel Médiation de la Musique)修了。
2021年春にWebメディア『FREUDE』を立ち上げ。クラシック音楽を中心にプログラムノートやライナーノーツ、レビュー、エッセイを多数執筆するほか、アーティストへのインタビュー、コンサートのプレトーク、講演会なども積極的に行なっている。
https://freudemedia.com