欧州で活躍著しい英国の新鋭アダム・ヒコックスがショスタコーヴィチ&ラフマニノフで東響デビュー

左:アダム・ヒコックス
右:谷 昂登 ©井村重人

 今や指揮者界は新たな才能が次々に登場する激戦区だが、8月の東京交響楽団定期に登場するアダム・ヒコックスは近年急速に注目を集める20代の最有望株の一人。来日公演で快演を聴かせてくれたばかりのシャニ&ロッテルダム・フィルのアシスタントを2019年から22年まで務めた後、23年から英グラインドボーン・シンフォニアの首席指揮者に抜擢され、さらに来シーズンからはノルウェーのトロンハイム響の首席指揮者にも就任する。ヨーロッパ各地のオケからの客演依頼も殺到しているが、イギリスの大指揮者リチャード・ヒコックスを父に持つサラブレッドと聞けば、そのリードにも持って生まれた何かがあるに違いないと推測したくなる。

 今回の来日はアジア・デビューだそうだが、その大事なコンサートに選んだ勝負曲は今年没後50年となるショスタコーヴィチの交響曲第10番。50分近くを要し、政治からの圧力にさらされ続けたこの作曲家の苦悩がストレートに感じられる大作だ。カラヤンが唯一録音したこの思弁的なドラマを、若き才能がどう読み解いて提示してくれるのだろうか。

 前半のラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の独奏を務めるのは谷昂登。桐朋学園を経て、現在はケルンで学んでいる。2021年の日本音コン1位をはじめ、各種のコンクールに上位入賞している逸材だ。オケの分厚いサウンドに若いエネルギーでぶつかっていくことだろう。

 冒頭には神秘的な美しさを湛えたリャードフの「魔法にかけられた湖」。次世代のホープが放つ渾身のロシア・プロに注目だ。

文:江藤光紀

(ぶらあぼ2025年8月号より)

アダム・ヒコックス(指揮) 東京交響楽団 第733回 定期演奏会 
2025.8/23(土)18:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
https://tokyosymphony.jp

他公演
2025.8/24(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール(025-224-5521)