岐阜発! メディアアート×語り×和洋古楽器で描く『源氏物語』光る調べ

現実と仮想世界が交錯する没入型のまったく新しい音楽体験を

 作曲家が知っていた当時のモデルの楽器と演奏スタイルで曲本来の姿を探り続ける古楽器奏者たちの感覚は、近代産業発達前の「昔の世界の文化」全般と相性が良いだけでなく、現代の通例とは異なる演奏作法を身につけられる柔軟さからか、ジャンル越境型のステージや最新テクノロジーを導入した舞台にも難なく適合できるようだ。

2024年3月14日横浜みなとみらいホール(小)
小川加恵プロデュース「古楽器とメディアアートで綴る千利休物語 一期一会~石垣山一夜上編~」より
©Hiroyasu Daidou

 古楽先進地かつ現代アートも盛んなオランダで豊かな経験を積んだフォルテピアノ&チェンバロ奏者の小川加恵が、2021年から地元の岐阜でエグゼクティブ・プロデューサーを務める「ぎふクラシックフェスティバル」。今夏は、彼女を含む古楽器奏6人が琵琶弾き語りの中沢龍心、怪談師の満茶乃と共に『源氏物語』の六条御息所に関わるエピソードを扱う異色パフォーマンスを展開。時空を超えた異界空間を21世紀日本となだらかに繋ぐ協力者として、デジタル映像表現を活かしたステージ演出で知られる映像クリエイター花房伸行を迎える。

小川加恵
小川加恵

 来場者は演奏に合わせてスクリーンに投影される映像やCGを同時鑑賞する他、XR体験席では特別なヘッドマウントディスプレイを各自装着。XR拡張技術を駆使した「拡張音楽堂」の試みにより、平安の雅と幽玄を感じる幻想的な空間演出と、自然素材の触感を伝える和洋古楽器演奏と迫真の語りがひときわ深い没入感の中、現実世界と仮想世界の融合した「麗しくも儚い」生霊物語の時空へと観客を誘う。第一線の団体で時代を拓き続ける古楽器奏者たちが和楽器や人の声と紡ぐ響きに期待したい。一期一会の上演を通じ、木材中心の内装が美しいサラマンカホールをどのような空間として体感できるかも楽しみだ。

左より)天野寿彦、小林瑞葉、春木英恵、高橋麻理子、角谷朋紀

 ふだん古楽系の演奏会が盛んな東京都心でも滅多に味わえない先進的な古楽器パフォーマンスが四国や九州など各地で展開される中、東西の文化伝統をじっくり融合させるこのステージで岐阜の文化的底力を深く味わいたい。

文:白沢達生

小川加恵プロデュース「古楽器とメディアアートで綴る千利休物語 一期一会~石垣山一夜上編~」より

【Information】
第2回ぎふクラシックフェスティバル
メディアアート×語り×和洋古楽器で綴る『源氏物語』光る調べ ~麗しくも儚いものがたり~

2025.8/22(金)15:00 岐阜/サラマンカホール


出演:小川加恵(エグゼクティブ・プロデューサー、チェンバロ)、満茶乃(かたりべ)、中沢龍心(琵琶弾き語り)、天野寿彦(ヴァイオリン)、小林瑞葉(ヴァイオリン)、春木英恵(ヴィオラ)、高橋麻理子(チェロ)、角谷朋紀(コントラバス)

曲目:
第一幕
恋慕 ― 光源氏のかたわらに咲く女たち
嫉妬 ― 葵上の死と女の影
第二幕
怨霊 ― 生霊として彷徨う声
昇華 ― 別れと決意
問:コンサート事務局 050-1808-4231
※サラマンカホール・チケットセンター窓口(TEL058-277-1110)で取り扱いあり
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https://gifuclassicfestival.peatix.com