In memoriam ロジャー・ノリントン

Roger Norrington 1934-2025

 イギリスの指揮者ロジャー・ノリントンが7月18日、逝去した。享年91。

Sir Roger Norrington
現役最後の舞台となった2021年ロイヤル・ノーザン・シンフォニアの公演はオール・ハイドン・プロだった
©Thomas Jackson at Tynesight Photography

 古楽演奏の先駆者として知られ、1978年にロンドン・クラシカル・プレイヤーズを創設。ヴィブラートを排した透明感のある響きに強いこだわりを持ち、ベートーヴェン演奏におけるテンポ解釈でも賛否を巻き起こしたが、18〜19世紀のレパートリーの演奏に新たな光を当て、その革新性は後に広く認められるものとなった。

 1998年から2011年までドイツ・シュトゥットガルト放送交響楽団(SWR)の首席指揮者を務め、モダン楽器を用いたピリオド奏法を積極的に取り入れ深化させた。2011年からはチューリヒ室内管弦楽団の首席指揮者も務めた。ノリントンが音楽界に巻き起こした議論は、20世紀の演奏史を振り返るとき、ひとつの大きな転換点であったと言える。

 日本でもNHK交響楽団にたびたび客演し、独自の解釈による演奏で聴衆に鮮烈な印象を残した。

文:編集部