オール・ジャパンで臨む新作オペラ 地球の叫び《みづち》、びわ湖から世界へ

 来る6月28日、29日、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールで「地球の叫び オペラ《みづち》」が世界初演される。指揮を務めるのは、日本を代表する指揮者の一人・下野竜也。台本は古典文学の研究者として知られる丹治富美子、作曲はNHK連続テレビ小説『マッサン』や大河ドラマ『西郷どん』を手がけた富貴晴美。演出にはオペラ演出の第一人者・岩田達宗が名を連ねるなど、日本のトップランナーたちの力を結集した注目の作品だ。
 「みづち」とは、日本各地の水にまつわる信仰に登場する龍神や大蛇などに由来する水を司るの神のこと。作品はその名にふさわしく、水と共に生きる人間の在り方や、地球環境の危機、そして未来への希望を壮大なスケールで描く。台本を手がけた丹治は、「《みづち》は地球のバイブル。生命が輝く地球を維持するために人類はいかに生きるべきか、その問いがこのオペラに込められている」と語る。
 物語の主人公は少年・小太郎。彼はみづちを求める厳しい旅を通して、自然の声に耳を傾け、人間と自然の調和を模索しながら自身の使命に目覚めていく。またドラマの根底には、女性たちの力が通奏低音のように流れており、演出の岩田は「実は女性が本当の主役。女性の力なしには地球は救えない」とこの物語を紐解く。

左より:富貴晴美、丹治富美子、岩田達宗

 富貴にとって本作は初のオペラ作品。「“大河オペラ”を創るつもりで全力で挑み、傑作ができた」と胸を張る。その音楽は、日本的な美しさと現代的な感性を融合させ、ドラマティックでありつつも深い祈りを湛えている。また、オペラが初めてという方でも気後れすることなく楽しめる、親しみやすく心地よいメロディも随所に感じられる。
 小太郎役は伸びやかな声と表現力を合わせ持つテノール・小堀勇介。美しく聡明な夕月姫役は次代を担う注目の若手ソプラノ・迫田美帆が務めるほか、黒田博、澤畑恵美、中島郁子、向野由美子、久保田真澄、伊藤貴之ら日本オペラ界を代表する実力派が顔を揃える。演奏は日本センチュリー交響楽団、合唱は日本オペラ協会合唱団が担う。まさにオール・ジャパンと呼ぶにふさわしい磐石の布陣だ。
 本作は、2025年大阪・関西万博を契機として、地球沸騰の危機からの創生を目指す「いのち・ちきゅう・みらいプロジェクト」の一環として制作され、オペラという総合芸術を通じて持続可能な未来へのメッセージを世界に発信する試みでもある。日本の文化・生命の中心とも言える琵琶湖で産声をあげる《みづち》は、時代の転換点に立つ私たち一人ひとりの心に深く響くだろう。

文:編集部

地球の叫び オペラ《みづち》
2025.6/28(土)14:00、6/29(日)15:00 各日びわ湖ホール

※予定上演時間約3時間(休憩あり)

作・台本:丹治富美子
作曲:富貴晴美
指揮:下野竜也
演出:岩田達宗

出演
小太郎:小堀勇介
夕月姫:迫田美帆
吾嬬重藤:黒田博
八重:澤畑恵美
志斐:中島郁子
黒姫:向野由美子
村長:久保田真澄
みづち:伊藤貴之 他

管弦楽:日本センチュリー交響楽団
合唱:日本オペラ協会合唱団

問:東京音協 https://t-onkyo.co.jp
 いのち・ちきゅう・みらいプロジェクト実行委員会 https://opera-mizuchi.com/