
右:アリス=紗良・オット ©Pascal Albandopulos
長年、指揮者界は男社会だったが、状況はここ10年程度の間に急激に変わりつつある。女性指揮者が次々にデビュー、快進撃を続けオーケストラなどでポストを得るケースも珍しくなくなってきた。
ニューヨーク出身のカリーナ・カネラキスも着実にキャリアを重ね、才能を開花させている有望株。もともとはヴァイオリンを弾いていたが、次第に指揮を志すようになり、2010年代後半には各地での演奏を成功に導き名声を高めた。現在はオランダ放送フィルの首席指揮者(2019年〜)、ロンドン・フィルの首席客演指揮者(2021年〜)の任にあるが、前者のポストはつい先日、2031年まで任期が再延長され長期政権が確定した。世界各地の名門団体からの客演要請も次々に舞い込み、次世代指揮者陣のトップランナーの一人と目される。
そのカネラキスが都響公演で遂に日本デビューを果たす。メインの曲目はマーラーの「巨人」。颯爽としたダイナミックな指揮ぶりで、都響を相手に大作シンフォニーをどう鳴らすか、実力をじっくりと体感するチャンスだ。
前半にはアリス=紗良・オットをソリストに招き、ラヴェルのピアノ協奏曲 ト長調。オットは一昨年リリースしたベートーヴェンのアルバムで、カネラキス率いるオランダ放送フィルと協奏曲第1番を録音しており、両者は勝手知ったる仲。ラヴェルの協奏曲はベルリン・フィルでのデビューなど節目で取り上げている勝負曲だけに、こちらも要注目だ。これからの時代を作っていく女性パワーに期待が高まる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年6月号より)
カリーナ・カネラキス(指揮) 東京都交響楽団
第1023回 定期演奏会Bシリーズ
2025.7/4(金)19:00
都響スペシャル
2025.7/5(土)14:00
サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp


