
右:上野耕平 ©Yuji Ueno
今年4月から大阪フィルの指揮者に迎えられ大きな飛躍が期待される松本宗利音は、2017年から2年間、東京シティ・フィルの指揮研究員として研鑽を積んだが、7月にはブラームスの交響曲第2番をメインに据えた魅力的なプログラムを引っ提げて、古巣の定期の舞台に登場する。彼の「しゅうりひと」という名前はドイツの大指揮者シューリヒトにちなんだもので、また研究員時代にはドイツ音楽の名匠・飯守泰次郎の薫陶も受けた。その松本のブラ2、伝統を継承しつつも現代的なセンスで作品の神髄に肉薄するものとなろう。
組み合わされるプログラムも興味深い。まずはブラームスとゆかりの深いドヴォルザークから交響詩「英雄の歌」。アメリカから帰国後、ドヴォルザークはオペラ創作に入る前の円熟期に5曲の交響詩を作曲しているが、これはその最後のもので、重苦しく始まり華々しい勝利の凱歌で閉じられる隠れ名作。タイトルには作曲と同じ年に亡くなった恩師ブラームスとの関連を指摘する説もある。
続いて大人気サックス奏者・上野耕平が登場し、まずはミヨーの「スカラムーシュ」。3楽章からなる明るくリズミカルな音楽で、特に「ブラジルの女」と題された終楽章のサンバは客席を賑やかな楽しい気分で満たすことだろう。続いて上野自身が委嘱した逢坂裕のアルトサックスのための協奏曲。逢坂は藝大出身の若手作曲家で、上野はサクソフォンの官能性を生かした旧作を手掛け録音も残している。モダンな作品に対する松本のアプローチにも注目だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年5月号より)
松本宗利音(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第380回 定期演奏会
2025.7/3(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp