
(c)京都コンサートホール
今年開館30周年を迎える京都コンサートホールが2月21日、記者会見を行い、2025年度の主催事業ラインナップを発表した。登壇者は館長の鷲田清一(哲学者)、ミュージックアドバイザーの広上淳一ら3名。
京都市出身で日本を代表する哲学者である鷲田は昨年4月、広上の後を受け現在のポストに就任。会見では、新年度に向けた京都コンサートホールの使命として「クオリティの高い公演の実現、クラシック音楽ファンのすそ野を広げること」の2点を掲げる。
「ベクトルが相反する2つのことを一度に目指す必要がありますが、そのためには聴衆の心を震わせるような公演を実現することに尽きると思います」と意気込みを語った。

30周年特別事業として全9事業を開催
オーケストラ公演では、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍を見せる若手指揮者の筆頭格クラウス・マケラとロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の公演が目を引く(11/11)。2027年に同楽団の首席指揮者に就任するマケラ。ブラームスやバルトークの作品で一足先にそのコンビネーションを確かめたい。ジョナサン・ノットと、彼が長く音楽/芸術監督を務めるスイス・ロマンド管弦楽団のコンビも楽しみだ(7/11)。
京都コンサートホールと、同ホールを本拠地とする京都市交響楽団が続けるプロジェクト第6弾は、広上が指揮するレスピーギの交響詩「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの祭り」をメインに据える(11/15)。
広上は「ローマ三部作は約30年前、日本フィルの正指揮者就任時に取り上げた作品。それ以来、演奏してこなかったので、今回縁ある京都コンサートホールと京響と一緒に、若き日を思い浮かべながら素敵な時間を共有したいです」と自身にとって思い出深い作品であることを明かした。

生誕100年・ブーレーズの特集も
オーケストラ公演以外にも個性豊かな企画が並ぶ。
2025年に生誕100年を迎える作曲家・指揮者のピエール・ブーレーズを特集する「ブーレーズへのオマージュ」には、彼に薫陶を受けたアンサンブル・アンテルコンタンポランのピアニスト永野英樹を中心に、フルートの上野由恵ら5名が出演。最初期のピアノ小品集「12のノタシオン」、フルートとピアノのための「ソナチネ」 の他、ブーレーズ自身も影響を受けたというラヴェルとシェーンベルクの作品が披露される(11/8)。
ほかにも、巨匠・内田光子によるベートーヴェン後期ピアノ・ソナタ3曲の円熟を味わえるリサイタル(10/23)に加え、吹奏楽の分野を中心に活躍する作曲家・酒井格(いたる)がプロデュースする「KCH的クラシック音楽のススメ Vol.6 ブラス・スターズ in KYOTO」が企画されている(11/30)。後者には菊本和昭(N響首席トランペット)、水無瀬一成(京響副首席ホルン)、風早宏隆(都響首席トロンボーン)、次田心平(読響テューバ)ら京都ゆかりのトッププレイヤー10名がこのコンサートのために集結する。
京都ならではのユニークな企画も
京都市内の観光名所で地元ゆかりの音楽家がコンサートを行う「Kyoto Music Caravan」は2023年度以来の開催。北野天満宮や元離宮二条城など全10ヵ所での公演が予定されており、鈴木美登里(ソプラノ)や西山まりえ(バロック・ハープ)らが出演する東寺でのバロック・オペラ&室内楽コンサートなど古都ならではのユニークな企画が並ぶ(5/6~26.2/7、ファイナル・コンサートを除き入場無料、拝観料は別途必要)。
今年20周年を迎える京都市ジュニアオーケストラの記念コンサートでは、指導に関わった広上、大友直人、下野竜也という3人のマエストロがタクトをとる(26.1/31)。三ツ橋敬子が指揮する京響のゴージャスなサウンド、サクソフォンの上野耕平のスーパープレイを家族そろって楽しめる0歳から入場可の「きょうと・キッズ・フェスタ」もラインナップされた(5/3)。
これまでに開催されてきた人気シリーズも継続。
アンサンブルホールムラタで行われる「北山クラシック倶楽部 2025」は全5公演。ロザンネ・フィリッペンス(ヴァイオリン、6/10)やエマニュエル・パユ(フルート)&エリック・ル・サージュ(ピアノ、9/24)ら海外の一流アーティストのリサイタルを510席の親密な空間で楽しみたい。期待の音楽家が登場するトーク付きのコンサート「京都北山マチネ・シリーズ」も全5公演。4組の俊英たちに加え、なんと2人のマエストロ、広上と沼尻竜典によるピアノ・デュオも(7/28)。京都コンサートホールの秋の風物詩「京都の秋 音楽祭」ももちろん予定されている(9/13~11/30)。
新年度は鷲田館長によるトーク・イベント「音とことばと。」が初開催。全3回のうち、初回のゲストには京響常任指揮者の沖澤のどかが登場する。
文:編集部
京都コンサートホール
https://www.kyotoconcerthall.org