緑きらめくヨーロッパの春、ペトレンコ&ベルリン・フィルはどこで聴く?ザルツブルクorベルリン 2つの旅

K.ペトレンコ&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(c)Monika Rittershaus

文:池田卓夫

 郵船トラベルが2026年のイースター(キリスト教の復活祭)シーズンに企画した2つの音楽ツアーの“目玉”は間違いなく、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が首席指揮者&芸術監督のキリル・ペトレンコとともに演奏するワーグナー『ニーベルングの指環(リング)』4部作の序夜(第1作)、《ラインの黄金》である。

劇場たたき上げの稀代のシェフをライブで体感

 ペトレンコはユダヤ系ウクライナ人のヴァイオリン奏者を父、ロシア人の音楽学者を母に1972年、旧ソ連時代のシベリアのオムスクで生まれた。父がフォアアールベルク交響楽団に転職したため、18歳からはオーストリアで育ち、ウィーン国立音楽大学で指揮を学んだ。1997〜99年にウィーン・フォルクスオーパー指揮者、1999〜2002年にドイツのマイニンゲン宮廷劇場、2002〜07年にベルリン・コーミッシェ・オーパー、2013〜20年にミュンヘンのバイエルン州立歌劇場のそれぞれ音楽総監督(GMD)を歴任。ウィーン国立歌劇場やフィレンツェ五月音楽祭劇場、ドレスデン州立歌劇場、ロンドンのロイヤル・オペラ、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場などに客演、ワーグナー楽劇の“聖地”バイロイト祝祭からも招かれるなど、キャリア前半はオペラ指揮者のイメージが強かった。日本でも2017年9月のバイエルン州立歌劇場引越公演でワーグナーの《タンホイザー》を指揮、センセーションを巻き起こした。

 シンフォニー指揮者としてのキャリアは2019年、ベルリン・フィルのシェフに就任して以降本格化した。2023年の日本ツアーにはモーツァルト、ブラームス、レーガー、R.シュトラウス、ベルクとドイツ=オーストリア音楽の王道で臨み、期待を大きく上回る名演奏を繰り広げた。コンサートマスターの1人、樫本大進によれば「とにかく話し合いを重んじ、全員のコンセンサス(合意)が得られた上でリーダーシップを発揮する」という新しい時代のマエストロであり、名人揃いのベルリン・フィルの潜在力を極限まで引き出す演奏スタイルは「凄絶」とすら言える。2025年11月の来日ではさらに凄みを増し、「一体どこまで進化(深化)するつもりなのか?」と思わせた。

Kirill Petrenko (c)Monika Rittershaus

旅のメインはペトレンコが導くワーグナー《ラインの黄金》

 イースター音楽祭は1967年、ペトレンコの3代前の芸術監督で欧州楽壇の「帝王」と呼ばれたヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~89)が故郷ザルツブルクに「春の音楽祭」として創設。カラヤンは夏のザルツブルク音楽祭の総監督を兼ねていたが、「手兵」のベルリン・フィルを前面に出し、より個人色の強い催しを追加したのだ。普段は歌劇場で演奏しないベルリン・フィルのオペラを聴ける貴重な機会でもあった。2013年以降、イースター期間のベルリン・フィルのオペラはドイツのバーデンバーデン祝祭劇場に舞台を移していたが、2026年、14年ぶりにザルツブルク祝祭大劇場へ復帰する。その第1作が今回のツアーに含まれる《ラインの黄金》である。4月6日の後、10日には本拠地ベルリン・フィルハーモニーでも上演するのでザルツブルクベルリンどちらのツアーでも「ペトレンコとベルリン・フィル」のオペラが聴ける。

ツアー①:ザルツブルク・イースター音楽祭でベルリン・フィルを連夜堪能

 ザルツブルク・イースター音楽祭&ウィーンのツアーではベルリン・フィルのシンフォニー・コンサートも、何と3公演聴くことができる。4月3日はペトレンコ指揮でマーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」、4日がトゥガン・ソヒエフ指揮でブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番(独奏:ジャニーヌ・ヤンセン)とベルリオーズの「幻想交響曲」、5日がダニエル・ハーディング指揮でハイドンのオラトリオ「天地創造」。ソヒエフもハーディングもお馴染みの指揮者だが、ベルリン・フィルとの組み合わせは日本で聴けないから貴重だ。マーラーとハイドンは合唱が大活躍、独唱者にも華やかな顔ぶれをそろえている。この後、8日のウィーンではイースターに因む「聖金曜日の音楽」を含むワーグナー最後のオペラ《パルジファル》をアクセル・コーバーの指揮、クラウス・フロリアン・フォークトの題名役で楽しむ。

旅のお楽しみには、ザルツブルク&ウィーンの旧市街を巡る散策も

2025年のザルツブルク・イースター音楽祭
(c)Vincent Forstenlechner
ミラベル庭園
モーツァルトの生家
ザルツブルク大聖堂
ウィーン国立歌劇場
シュテファン大聖堂

ツアー②:ベルリン・フィルハーモニーで聴く《ラインの黄金》/国立歌劇場&ドイツ・オペラでティーレマン、ペルトコスキも

 ベルリンのツアーは10日にペトレンコ指揮ベルリン・フィルの《ラインの黄金》を鑑賞した後、13日にシュターツカペレ・ベルリン(ベルリン国立歌劇場管弦楽団)の演奏会をGMDクリスティアン・ティーレマンの指揮で聴く。前半はソプラノにユリア・クライター、バリトンにコンスタンティン・クリンメルを配したR.シュトラウスの管弦楽伴奏歌曲集、後半はベートーヴェンの交響曲第6番「田園」とドイツ音楽の王道プログラムだ。クリンメルは1993年生まれの若手でシュトゥットガルト音楽演劇大学時代の恩師、吉原輝教授(バリトン)によって「正しい基礎を身につけた」と語る。

C.ティーレマン&ベルリン国立歌劇場管弦楽団(c)Stephan Rabold

 ベルリンでもオプションとして《パルジファル》の鑑賞が可能。旧西ベルリン側のベルリン・ドイツ・オペラでドイツ人映画監督フィリップ・シュテルツルが演出した舞台を11日に指揮するのはタルモ・ペルトコスキ。2000年フィンランド生まれの若手だが、すでにソヒエフの後任としてフランスのトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団、ヤープ・ヴァン・ズヴェーデンの後任として香港フィルハーモニー管弦楽団それぞれの音楽監督に抜擢されるなど世界楽壇の寵児となりつつある。2025年6月のNHK交響楽団デビューでも、賛否両論の激しい反響を巻き起こしたのは記憶に新しい。

ブランデンデルク門、大聖堂——
ベルリンに行くなら外せない観光地も

ベルリン・フィルハーモニー(c)Schindler Heribert
ブランデンブルク門
ベルリン大聖堂

郵船トラベル
ザルツブルク・イースター音楽祭&ウィーン11日間

〈2026年4月1日出発〉

旅行期間:2026.4/1(水)~4/11(土)
出発地:東京
日数:11日間

スケジュール(クリックして詳細を表示)

◎:入場観光 ○:下車観光 ★:オプショナルツアー

●4/1(水)
21:45~23:05 羽田または成田発、ザルツブルクまたはミュンヘンへ(ヘルシンキまたはワルシャワまたはイスタンブールにて乗り継ぎ)

●4/2(木)
8:55~9:35 ザルツブルクまたはミュンヘン着、専用バスにてホテルへ
(ザルツブルク空港→ホテル:所要約20分/ミュンヘン空港→ホテル:所要約2時間45分)
10:40~13:30 ホテル着、自由行動
19:00 夕食

●4/3(金)
9:30~13:00 ザルツブルク市内観光(○ミラベル庭園、○モーツァルトの生家、◎大聖堂、○モーツァルトの住居、○ゲトライデ通りなど)
13:00 自由行動
【鑑賞】ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(19:00開演 祝祭大劇場)

●4/4(土)
自由行動
【鑑賞】ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(19:00開演 祝祭大劇場)

●4/5(日)
自由行動
★11:30~14:30 カラヤンが眠る「アニフ教会」見学&昼食
【鑑賞】ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(19:00開演 祝祭大劇場)

●4/6(月)
自由行動
【鑑賞】ワーグナー《ラインの黄金》(18:00開演 フェルゼンライトシューレ)

●4/7(火)
8:45 専用バスにて、世界遺産ヴァッハウ渓谷に聳えるメルク修道院へ(所要約2時間45分)
11:30 メルク修道院【世界遺産】観光
14:30 昼食後、専用バスにてウィーンへ(所要約1時間45分)
16:30 ホテルにチェックイン

●4/8(水)
8:30~11:30 ウィーン観光(○市立公園、○王宮庭園内モーツァルト像、◎聖シュテファン大聖堂、○モーツァルトハウスなど)
13:30 昼食後、自由行動
【鑑賞】ワーグナー《パルジファル》(17:00頃開演 ウィーン国立歌劇場)

●4/9(木)
自由行動
★9:00~12:00 ベルヴェデーレ宮殿(上宮)観光

●4/10(金)
専用バスにて空港へ(所要約30分)
11:35~19:50 ウィーン発、ヘルシンキまたはワルシャワまたはイスタンブール乗り継ぎにて帰国

●4/11(土)
13:00~19:20 羽田または成田着、解散

ベルリン滞在8日間
〈2026年4月8日出発〉
旅行期間:2026.4/8(水)~4/15(水)
出発地:東京
日数:8日間

スケジュール(クリックして詳細を表示)

◎:入場観光 ○:下車観光 ★:オプショナルツアー

●4/8(水)
21:50~23:05 羽田または成田発、ヘルシンキまたはワルシャワ乗り継ぎにてベルリンへ

●4/9(木)
8:00~10:35 ベルリン着、専用バスにてホテルへ(所要約50分)
10:00~12:30 ホテル着、自由行動
19:00 夕食

●4/10(金)
9:00~12:30 ベルリン観光(○ブランデンブルク門、◎ベルリンの壁博物館、○チェックポイント・チャーリー、◎大聖堂など)
14:00 昼食後自由行動
【鑑賞】ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(18:00開演 ベルリン・フィルハーモニー)

●4/11(土)
自由行動
★9:45~12:30 「絵画館」見学

●4/12(日)
自由行動
★9:30~13:30 シャルロッテンブルク宮殿【世界遺産】観光

●4/13(月)
自由行動
【鑑賞】ベルリン国立歌劇場管弦楽団(19:00 ベルリン国立歌劇場)

●4/14(火)
専用バスにて、空港へ(所要約50分)
13:50~19:05 ベルリン発 ヘルシンキまたはワルシャワ乗り継ぎにて帰国

●4/15(水)
13:00~18:40 羽田または成田着

問:郵船トラベル 音楽・美術ツアー専用デスク03-6774-7940
https://www.ytk.jp/music/