【CD】近藤譲 オーケストラ作品集「牧歌」/ピエール=アンドレ・ヴァラド&読響 他

 近藤譲は恐ろしく禁欲的な作曲家だ。音楽が感覚の戯れに終わることを厳しく律し、限られた音色や単純なリズムによって空間に一つの秩序をもたらす。筆者にとって長らく謎めいた作曲家だったが、「牧歌」(1989)を改めて聴いて言いたいことがすっと入ってきた。これに比べると1975年の「鳥楽器の役割」では、まだ近藤はずっと饒舌だ。ピアノ独奏曲をオーケストラで上書きした近作「パリンプセスト」(2021)では、要素の絞り込みや組み合わせの妙味が一層の深化を遂げ、禁欲的態度が荘厳さを帯び、ある種の儀式性のようなものすら漂いだしている。近藤の創作のエッセンスが伝わってくる一枚だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年12月号より)

【information】
CD『近藤譲 オーケストラ作品集「牧歌」/ピエール=アンドレ・ヴァラド&読響 他』

近藤譲:牧歌、鳥楽器の役割、フロンティア、ブレイス・オブ・シェイクス、パリンプセスト

ピエール=アンドレ・ヴァラド(指揮)
読売日本交響楽団
国立音楽大学クラリネットアンサンブル

収録:2023年5月、東京オペラシティ コンサートホール(ライブ)
コジマ録音
ALM-146 ¥3300(税込)