半世紀以上続く伝統の「メサイア」——神奈川県立音楽堂クリスマス音楽会

プロ演奏家と地元の高校生が共演

左:大塚直哉(c)E.Shinohara 
右:2023年の公演より(c)ヒダキトモコ

写真提供:神奈川県立音楽堂

 年末の日本のコンサート・シーンというと、どうしても「第九」を思い浮かべがちだけれど、ヘンデル「メサイア」の伝統も忘れてはいけない。聖書をテキストに、イエスの誕生から死、そして復活までを描いた宗教的オラトリオ。1925(大正14)年の青山学院での日本初演以来、キリスト教系の学校や音楽大学など多くの団体が定期的な上演を続けている。ちなみに「第九」の東京音楽学校による公式日本初演は1924年だから、ほぼ同じ歴史がある。

 今年で57回目を迎える神奈川県立音楽堂の「メサイア」も、1966年から続く伝統の公演。第1回公演から、神奈川県合唱連盟が合唱を担っているのは、戦後の日本のアマチュア合唱運動の高まりも反映しているだろう。初回からずっと歌い続けているメンバーもいるのだとか。

 さらに2011年からは、県内の高校合唱団が参加する「メサイア未来プロジェクト」が始まった。若い世代に「メサイア」の伝統を継承する意義は大きい。今年も約40人の大人の合唱団に対して70人の高校生が出演(県立湘南高、県立多摩高、法政二高)。10代で大曲「メサイア」全曲を体験することは、彼ら自身の今後の音楽人生においても貴重な財産になるはず。しかも大塚直哉が指揮する神奈川フィル(4型)のゲスト・コンサートマスターは桐山建志、声楽ソロもソプラノ:澤江衣里、アルト:中嶋俊晴(カウンターテナー)、テノール:谷口洋介、バリトン:池内響と、バロックの正統を伝えるに隙のない陣容だ。

左より:澤江衣里/中嶋俊晴(c)Martin Chiang/谷口洋介/池内響(c)T.Tairadate

 それはもちろん私たち聴き手にとってもうれしいこと。古楽のスペシャリストたちと、合唱団の「伝統」と「未来」が融合して、どんな味わいの「メサイア」が醸成されるだろうか。ぜひ耳を傾けよう。

文:宮本明

神奈川県立音楽堂 開館70周年記念
第57回クリスマス音楽会
ヘンデル「メサイア」全曲

2024.12/15(日)14:30 神奈川県立音楽堂


出演
大塚直哉(指揮)

澤江衣里(ソプラノ)
中嶋俊晴(カウンターテナー)
谷口洋介(テノール)
池内響(バリトン)

神奈川フィルハーモニー管弦楽団
桐山建志(コンサートマスター)、山縣万里(チェンバロ)、田宮亮(オルガン)

神奈川県合唱連盟/音楽堂「メサイア」未来プロジェクト合唱団

問:チケットかながわ0570-015-415
https://www.kanagawa-ongakudo.com