尾高忠明と大阪フィルの東京公演のライブ録音は、冒頭の高弦のリズムと低弦の旋律から“殺気”のような気迫が伝わる。楽団伝統のパワーも存分に発揮しつつ、重厚なイメージには留まらず、むしろ機敏で鋭いサウンド。ギリギリまで推進力を強めながら、本作の特徴である錯綜するリズムは崩れない。豊かな歌心が短いフレーズにまで浸透しているのも見事。クライマックスは雄渾そのもの、アダージョは流れの良さと呼吸の深さを両立、熱い歌に心動かされる。大阪フィル音楽監督就任後、尾高が“巨匠化”するどころか新たな表現のステージに入ったことを実感する。名演。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年12月号より)
【information】
CD『ブルックナー:交響曲第6番/尾高忠明&大阪フィル』
ブルックナー:交響曲第6番(ノーヴァク版)
尾高忠明(指揮)
大阪フィルハーモニー交響楽団
収録:2024年1月、サントリーホール(ライブ)
フォンテック
FOCD9910 ¥3080(税込)