堤剛が文化勲章に、近藤譲、藤村実穂子が文化功労者に選出

堤剛 (c)鍋島徳恭

 10月25日、2024年度の文化勲章受章者7人と文化功労者20人が発表され、チェリストの堤剛が文化勲章に、作曲家の近藤譲、メゾソプラノの藤村実穂子が文化功労者に選ばれた。
 なお、チェリストの文化勲章受章は堤が初めて。

 堤は1942年東京生まれ。桐朋学園で齋藤秀雄に師事し、15歳で第26回毎日音楽コンクール(現・日本音楽コンクール)で第1位。その後インディアナ大学に留学し、ヤーノシュ・シュタルケルのもと研鑽を積む。ミュンヘン国際コンクールで第2位(最高位)、カザルス国際コンクールで第1位を獲得するなど国際的なキャリアを築き、日本の音楽界を牽引してきた。
 チェリストとして活躍する一方、霧島国際音楽祭音楽監督(2001~)、サントリーホール館長(2007~)、桐朋学園大学/大学院学長(2004~13)、日本演奏連盟理事長(2015~)、日本チェロ協会会長(1997~2017)、同理事長(2017~)などの要職を歴任。演奏以外でも我が国の芸術文化の発展を支えてきた。また、教育の分野でもその功績は大きく、カナダ・西オンタリオ大学准教授、アメリカ・イリノイ大学教授、インディアナ大学教授を経て現在は母校・桐朋学園大学で特命教授(元学長2004~13)の職にあり、今日活躍している多くのチェリストを世に送り出した。また、国際コンクールの審査員も数多く務めている。
 2022年にはサントリーホールで80歳記念コンサートを開催。来年2月には徳永二男(ヴァイオリン)、練木繁夫(ピアノ)との三重奏の公演や、リサイタルが予定されており、現在も精力的に活動を続けている。

 選出にあたり、堤は以下のようにコメントしている。

このたび文化勲章を賜り、身に余る光栄に思っております。これまで支えてくださった多くの方々に心より感謝申し上げます。音楽は人間の心に内なる豊かさを育み、多様な背景を持つ人々の心を繋ぐ架け橋となります。音楽芸術は人類の共通財産として、世界に平和を築く礎になると信じています。
これからも音楽芸術の発展に貢献できるよう精進して参ります。

堤剛

近藤譲 (c)Jorgen Axelvall

 近藤は1947年東京生まれ。東京藝術大学卒業。ロックフェラー3世財団のフェローとしてニューヨークに、ブリティッシュ・カウンシル・シニア・フェローとしてロンドンに滞在。米国イーストマン音楽院では特別客員教授を務め、ハーヴァード大学をはじめとした欧米の多くの大学に招かれ講演を行う。国内においては、エリザベト音楽大学、お茶の水女子大学・大学院の教授、また、母校の東京藝術大学でも長年教鞭をとり、現在は昭和音楽大学教授、お茶の水女子大学名誉教授。日本現代音楽協会理事長も務める。
 海外で最も著名な日本人作曲家のひとりであり、フィレンツェ五月音楽祭やタングルウッド音楽祭をはじめとする国際音楽祭で特集が組まれている。国内でもサントリー音楽財団(現・サントリー芸術財団)主催によるオーケストラ作品個展(2004)、東京オペラシティ文化財団主催「コンポージアム」のオーケストラ作品個展「近藤譲の音楽」(2023)などが開催されている。
 1970年代前半に発表した「線の音楽」という独自の作曲方法、音楽の捉え方は次世代の作曲家たちにも大きな影響を与えた。180曲近くにのぼる作品のほとんどが英国ヨーク大学出版(UYMP)から出版されている。今年3月、第55回サントリー音楽賞を受賞。

藤村実穂子 (c)R&G Photography

 藤村は1966年岐阜県生まれ。2002年、主役級としては日本人初となるバイロイト音楽祭デビューを果たした後、9年連続で出演するなど、ヨーロッパを拠点に活躍する世界的なメゾソプラノ。ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラといった世界各地の主要劇場や音楽祭から定期的に招かれている。また、コンサート歌手としての活躍も目覚ましく、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、バイエルン放送響など世界の名だたるオーケストラや指揮者とも共演を重ねている。また、ドイツリートの分野でも高い評価を受ける。
 2013年サントリー音楽賞、14年紫綬褒章を受章。2022年には、ソリストとして参加した『マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」』(グスターボ・ドゥダメル指揮、ロサンゼルス・フィルハーモニック)が「グラミー賞・最優秀合唱演奏賞(Best Choral Performance)」を受賞している。

 文化勲章の親授式は11月3日、文化功労者の顕彰式は同5日に行われる。

KAJIMOTO
https://www.kajimotomusic.com