4月16日、神戸文化ホールで、神戸市室内管弦楽団の音楽監督・鈴木秀美による記者会見が開催され、同楽団の2026年度シーズン開幕公演となる第172回定期演奏会の概要とともに、神戸市室内管弦楽団の今後への思いを語った。
神戸市室内管弦楽団は1981年に「神戸室内合奏団」として発足し、2018年に管楽器を加えて現在の編成となった。団員数は26名(25年12月)で、定期演奏会のほかセレクションシリーズなど年間複数の公演を行っている。
2021年から音楽監督を務めるチェリストで指揮者の鈴木秀美は、神戸市出身。設立当初から関わる創立メンバーでもある。
3月、神戸市は来場者数の停滞や収支改善の見通しの厳しさを理由に、補助金の有効性・効率性および財団の経営安定化の観点から、同楽団への補助金を2027年度で打ち切る方針を発表した。これにより、楽団は存続の岐路に立たされている。
会見で鈴木は、補助金打ち切りの方針を受けた現状への受け止めと、音楽文化の価値や社会における役割について、芸術家としての思いを率直な言葉で語った。
「まず、いつも満杯のお客さまがいらしている状態であれば、このような話はなかったのでしょうから、私たちの力が足りなかったということについては残念に思っています。補助金カットは大きなショックです。私たちに対するカットというのももちろんですが、それよりも音楽に対してお金を出すのをやめようというのは、非常に悲しいものです」

「結局のところ、私たちが生き延びるかどうかというよりも、神戸の人たちが音楽を聴くチャンスが減ってしまうということが大きな問題なのです。
生の音楽を聴くというのは人生の中で非常に重要な時間です。例えば絵画をポスターで見るのと、本物を見ることの違いに似ています。実際に、美術館に行って本物の絵を見ると、まったく違う感動を得るわけです。コンサートもそれと同じで、そのチャンスが減ってしまうことは、芸術に関わる者として何としてもやめてもらいたい、助けてほしいと思うわけです。
もし企業が資金を出してくれるということであれば、私はどこへでも伺います。私たちがどのような音楽をしているのか、なぜそれを続けているのかを直接説明し、ご理解いただけるのであれば、ぜひともお願いしたい」
「様々な文化に対するお金が全国どこを見ても減っていっているのは、大きな問題です。つまり文化とは何か、ということにもなります。音楽もそうですし、美術や彫刻あるいは文学も、芸術はすべて数値で測れないものです。それに価値を見出すからこそ、私たちは人間であるんです。
そのためには、ある程度の知識とそれを継続していくことが必要です。それにどれぐらいの公金が妥当かということについては、いろいろな意見があるでしょうから、私が簡単にどうこう言える問題ではないですし、一言では言いきれないと思います。しかし音楽そのものの価値というのは、文学や美術などと同じように、時間をかけて、尊敬と理解を持って見ていく、聴いていくことによって分かってくるという面が多分にあります。ですから、目の前の数値目標とか、儲かるものは残っていいが、そうではないものは切っていくというのは非常に殺伐とした感じがいたします」

「神戸では、阪神・淡路の地震がありましたし、他にもそういう災害があったりすると、音楽は二の次、三の次になります。そこで『音楽を聴いて心が慰められる』と言うと、『音楽で腹は満たされないじゃないか』ということを言われる方もいらっしゃいます。確かにそうはなりませんけれども、しかし心の支えにはなります。生きる力というのは音楽によって本当に得られるんです。音楽で元気になるとか、傷んだ心を癒してくれるということは起きるわけで、それがなくなることは何としても避けたいと思うわけです」
「いま、たくさんの方々が応援してくださっています。神戸は私の出身地で知っている方も多いですから、『ぜひ頑張ってほしい』『なくなるのは惜しい』という声もたくさんいただいており、本当に感謝いたします。
私が子どもの頃は、良い音楽を聴きたいと言ったら、大阪や京都、あるいは東京に行かなければなりませんでした。これからもこのオーケストラは、神戸市の皆さんに質の高い音楽を提供できるように頑張ってまいりますので、応援をどうぞよろしくお願いいたします」
文:編集部
神戸市室内管弦楽団 第172回定期演奏会『イタリア紀行』
2026.5/16(土)15:00 神戸文化ホール 大ホール
〇出演
鈴木秀美(指揮)
タマーシュ・ヴァルガ(チェロ)
〇プログラム
ロッシーニ:歌劇《アルジェのイタリア女》序曲
ロータ:チェロ協奏曲第2番
シューベルト:イタリア風序曲第2番 ハ長調 D591
シューベルト:交響曲第6番 ハ長調 D589
問:神戸市民文化振興財団078-361-7241
https://www.kobe-ensou.jp

