昨年6月に開催された第17回チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で第2位に輝いたイギリス人ピアニストのジョージ・ハリオノ。コンチェルト日本デビューとなるサントリーホールでの一夜で聴かせるのは、チャイコフスキーの第1番と、ラフマニノフの第2番だ。ピアノ協奏曲の人気首位を争うこの2作は、どちらも同コンクールのファイナル・ステージでハリオノが演奏した作品。共演は渡邊一正指揮、東京フィルハーモニー交響楽団だ。
「2曲ともロマン派の大作ですが、まったく異なる性質の協奏曲です。チャイコフスキーの作品は、ピアノとオーケストラは寄り添い合うというよりも、別々に活躍して響きます。一方のラフマニノフは、ピアノとオーケストラとのハーモニーが美しく響き合います。どちらもよく知られた作品ですが、両方のキャラクターを生かしつつ、新風を届けられるように演奏したいです」
世界各地のコンクールで受賞し続けてきたハリオノは、12歳からオーケストラとの演奏を重ねている。ソロと違い、共演者のいる協奏曲では、どのようなことを心掛けているのだろうか。
「指揮者やオーケストラによって、音楽に変化が生まれるのが協奏曲の醍醐味だと思います。ピアニストがいつも同じように弾いていたら、退屈な演奏になってしまいますよね。僕としては、指揮者とソリストがお互いの解釈に基づきながら、対話するように音楽を作っていけると楽しいです。そのためにも、自分が常に柔軟であることを大事に考えています。チャイコフスキー国際コンクールの後は、協奏曲の機会をたくさんいただいていますが、リハーサルの時間が限られていることも多いです。だからこそ柔軟さはとても大切ですし、重要なスキルだとも考えています」
ハリオノは2001年生まれの23歳。9歳でソロリサイタル・デビューを果たし、13歳の頃には音楽の道に進むことを決意したという。
「現在のイギリスはピアノ教育が盛んとは言い難く、私の両親も音楽家ではなかったので、音楽的に特別恵まれた環境ではありませんでしたが、13歳からは普通教育の学校には通わず、ホームスクールという形で家庭学習をしてピアノに集中してきました。海外のコンクールやマスタークラスを受ける時には両親も行動を共にしてくれましたし、素晴らしい先生方にも恵まれてきました」
今後は日本での演奏活動も活発に行いたいと語る。
「母方の祖国インドネシアのジャカルタでも、昨年初めて演奏しました。チケットは10分で完売してしまうほど、ピアノ音楽への注目が高まっています。イギリスに比べると、韓国や日本などアジアの国々はピアノが盛んで、若い聴衆も多くて嬉しく思っています。いまはロマン派や近現代の超絶技巧の曲目のリクエストが多いですが、今後はショパンやモーツァルトにも挑戦していきたいですね」
穏やかで明るい笑顔を見せるハリオノ。その爽やかで力強い演奏に注目していきたい。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ2024年10月号より)
ジョージ・ハリオノ ピアノ協奏曲 日本デビュー
2024.11/28(木)19:00 サントリーホール
問:MIYAZAWA & Co. info@miy-com.co.jp
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