秋からの定期公演に登場する指揮者の顔ぶれを見ていると、やはりN響はさすが懐が深いなあ、と感心する。ペトル・ポペルカやタルモ・ペルトコスキなど今をときめく俊英に加えて、オロスコ・エストラーダのような実力ある中堅も、初めて招いているからだ。
オロスコ・エストラーダは1977年コロンビア生まれ。南米出身だがウィーンで学び、トーンキュンストラー管弦楽団やウィーン交響楽団の首席指揮者を歴任して、当地楽壇と縁が深い。それだけに、ラテン系らしい熱いパッションと、厚みのある響きと確固たる造形感覚をそなえている。ワーグナーの《タンホイザー》序曲とショスタコーヴィチの交響曲第5番の2曲は、持ち味を発揮するのにぴったりの作品となるだろう。
この2曲のあいだに、ヴァインベルクのトランペット協奏曲が演奏される。ポーランドに生まれて長くロシアで活動したこの作曲家は、ショスタコーヴィチから高く評価され、近年は再評価が著しい。1968年初演のトランペット協奏曲も、ショスタコーヴィチ風の冷めたユーモアと狂気を秘め、第3楽章にはマーラーの交響曲第5番や、メンデルスゾーンの結婚行進曲のグロテスクな変形も飛び出す。
この怪作を独奏するのは、ドイツ人奏者ラインホルト・フリードリヒ。アバドが2003年にルツェルン祝祭管弦楽団を編成した際、首席トランペットに任命した名手だけに、冴えのあるソロで楽しませてくれるはずだ。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ2024年10月号より)
アンドレス・オロスコ・エストラーダ(指揮) NHK交響楽団
第2023回 定期公演 Cプログラム
2024.11/15(金)19:00、11/16(土)14:00 NHKホール
問:N響ガイド0570-02-9502
https://www.nhkso.or.jp