作曲家のあるジャンルを一度に聴くことで、新たな発見がもたらされることがある。ベートーヴェンという、常に過去の自分を乗り越えて進んだ作曲家の作品では、特にその種の感動を受け取りやすい。
そんなベートーヴェンの全5曲のピアノ協奏曲を、一夜にして、世代も背景も異なるソリストで聴くことができる。共演は現田茂夫指揮、東京フィルハーモニー交響楽団。
興味深いのはピアニストのラインナップだ。まず第1番は、子どもの頃からロシアの名教師のもと身につけた骨太なテクニックで聴き手を魅了する上原彩子。
日本生まれ、ドバイ育ち、イギリスとドイツで学んだのちロン・ティボーコンクールで優勝。ユニークな経歴に由来する自由な音楽性を持つ三浦謙司は、第2番を弾く。
日本音楽コンクール最年少優勝で注目され、現在ニューイングランド音楽院で学ぶ吉見友貴は、第3番でその特別な美意識を披露。
楽しみなのは、第4番を演奏するソン・ミンス。教育者としても知られる彼は、ヴァン・クライバーンコンクール最年少優勝のイム・ユンチャンが慕う恩師でもある。ベートーヴェンの名手として知られる彼の初来日演奏だ。
そして大トリとして「皇帝」を演奏するのは、ベートーヴェンを主軸レパートリーとする横山幸雄。輝かしくクリアな音色とゴージャスな音楽づくりで締めくくってくれるだろう。
ピアニストの音色の違いを聴き、またベートーヴェンへのアプローチの多様性を楽しむ一夜となりそうだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2024年10月号より)
ベートーヴェン ピアノ協奏曲全曲演奏会
2025.1/25(土)17:30 サントリーホール
2024.9/28(土)発売
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp