マリア・ジョアン・ピレシュが「高松宮殿下記念世界文化賞」を受賞

 第35回「高松宮殿下記念世界文化賞」(主催:公益財団法人 日本美術協会)の受賞者が9月10日、記者会見にて発表され、音楽部門にはピアニストのマリア・ジョアン・ピレシュ(ピリス)が選ばれた。

マリア・ジョアン・ピレシュ Photo:Shun Kambe(c)The Japan Art Association

第35回 高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者
◎絵画部門:ソフィ・カル(フランス)
◎彫刻部門:ドリス・サルセド(コロンビア)
◎建築部門:坂茂(ばん しげる/日本)
◎音楽部門:マリア・ジョアン・ピレシュ(ポルトガル/スイス)
◎演劇・映像部門:アン・リー(台湾)

 本賞は1988年、日本美術協会の設立100周年を記念して創設。前総裁・高松宮殿下の「世界の文化芸術の普及向上に広く寄与したい」という遺志を継ぎ、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の5分野で、国際理解の礎となる文化芸術の発展に貢献した芸術家に授与される。
  音楽部門ではこれまで、第1回のピエール・ブーレーズにはじまり、レナード・バーンスタイン、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチら偉大な音楽家たちがその名を刻んできた。ピアニストではマルタ・アルゲリッチ、マウリツィオ・ポリーニ、内田光子らが受賞しており、最近では2022年にクリスチャン・ツィメルマンが選出されている。

 ピレシュは1944年、ポルトガル出身。70年、ベートーヴェン生誕200周年記念コンクールで優勝し国際的なキャリアを開始。ソリストとしてベルリン・フィル、ボストン響、ロイヤル・コンセルトヘボウ管などの名門に客演するほか、レコーディングも活発に行い、エラート(15年間)&ドイツ・グラモフォン(25年間)に在籍した間、膨大な数の録音を残している。
 一方、99年にポルトガルの農村地帯ベルガイシュに芸術センターを設立し、プロ・アマを問わないアーティストのためのワークショップを開催。その他世界各地でもマスタークラスを行い、音楽と自然の両方を敬う独自の教育活動を展開している。2008年にはNHKの教育番組『スーパーピアノレッスン』で講師を務めた。1969年以降度々来日しており、訪れた際には文楽や歌舞伎を鑑賞するなど、親日家としても知られている。今年で80歳、節目の年での受賞となった。

池辺晋一郎

 音楽部門選考委員の池辺晋一郎はピレシュについて、「これまでに彼女の演奏をたくさん聴きました。特にモーツァルトは他のピアニストと一線を画していて、温かく優しい音色とデリケートで細やかな表現が特徴的です。近年、パワフルでダイナミックな演奏がもてはやされる傾向がある中で、ピレシュさんの受賞には大きな意義があると思います」と述べた。

 「建築界のノーベル賞」といわれるプリツカー賞を受賞した世界的な建築家で、長年にわたり被災地支援にも力を注ぐ坂は、生前の小澤征爾と交流があったことを明かした。
 「この賞は小澤さんはじめ、私が尊敬する方々が過去に受賞されています。彼とは20年以上の付き合いで、ラグビーを通じて親しくなり、ワールドカップを一緒に見に行ったこともあります。彼の人間を魅了する力に憧れていました」と思い出を語った。
 同時に発表される第27回若手芸術家奨励制度の対象団体は、コムニタス・サリハラ芸術センター(インドネシア)が選ばれた。

坂茂

 各部門の受賞者には、それぞれ顕彰メダルと感謝状、賞金1500万円、若手芸術家奨励制度では奨励金500万円が贈られる。

高松宮殿下記念世界文化賞
https://www.praemiumimperiale.org