沼尻竜典作曲 歌劇《竹取物語》

日本最古の物語に新たな光をあてるオペラ、待望の上演!

 びわ湖ホールが文化庁の共同制作支援事業の助成を受けて、iichiko総合文化センター(大分市)、札幌コンサートホールKitara(札幌市)、やまぎん県民ホール(山形市)と共同で、沼尻竜典作曲の歌劇《竹取物語》を上演する。びわ湖ホール公演は、初心者からオペラ通まで楽しめる「オペラへの招待」のシリーズの一環。これまで同様に、びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーを軸としたキャスティング(翁:迎肇聡、媼:森季子、帝:西田昂平 ほか)が行われているが、ヒロインのかぐや姫役は砂川涼子(びわ湖ホールでの11月24日の公演のみ声楽アンサンブルの高田瑞希が務める)、大伴御行役は晴雅彦がそれぞれ担う。砂川も晴も当該の役でこれまでにもこのオペラに出演してきた。

左より:阪 哲朗/中村敬一 ©Keiichi Kimura/砂川涼子 ©Yoshinobu Fukaya/高田瑞希

 本作は、第2代びわ湖ホール芸術監督(現・桂冠芸術監督)で指揮者の沼尻が、「子どものころ慣れ親しんだ昭和の歌謡曲のスタイルを意識した」という親しみやすいメロディが満載のオペラ。故・栗山昌良の演出により2015年8月にびわ湖ホールで日本初舞台上演された。さらに22年には同ホールでコロナ禍に合わせたセミ・ステージ形式で再演されたが、この時に演出補を担当したのが栗山の弟子である中村敬一。今回は栗山演出をさらに発展させた形で演出を担う。

 指揮はびわ湖ホール芸術監督・山形交響楽団常任指揮者の阪哲朗で、びわ湖ホール公演のオーケストラは日本センチュリー交響楽団が務め、他公演はそれぞれの地域で活動する九州交響楽団、札幌交響楽団、山形交響楽団が担当する。楽団はピットではなく舞台上で演奏。合唱はびわ湖ホール声楽アンサンブルと各地域の合唱団が出演する。

左より:晴 雅彦/迎 肇聡/森 季子/西田昂平

 《竹取物語》は誰もがよく知る「竹から生まれたかぐや姫」の物語を原作にしている。最後にかぐやは月に帰るが、「人を愛し、助け合って、思いやる心」は月にはないのだという。制作発表の場で、中村は台本を沼尻自身が書いたことに触れ、「台本がとてもよくできていて、骨格のしっかりとした、繰り返し上演し得る作品」とした上で、栗山の演出を受け継ぐことに「それを踏襲する形で発展させて公演を行うことができ、光栄です。各地の違うホールでどのように上演するのかが僕の腕の見せ所」と話した。砂川は22年の上演に続いての出演になるが、「同じ役を何度も歌うことを非常にうれしく思います」として、「かわいいだけでなく、人間の世界で生きたかぐやの内面をより深く掘り下げたい」と述べた。沼尻の自作自演の記録をあえてみていないという阪は、「まず原作のことを勉強し、オペラの台本にどう書かれているかを確かめます。その上で、母国語の日本語で書かれているからこそ、ちゃんと発音ができているかに注意を払いながら、いろんなスタイルが入った音楽をオーケストラとのバランスを考えて演奏したい。楽団ごとの地方色を捉えた上で取り組むことができれば」と話した。

 「作品が生きているということを示す貴重な機会」とは阪の言。このオペラがレパートリーとして確立される道筋を見つけるための上演になることは必至だ。
文:小味渕彦之
(ぶらあぼ2024年9月号より)

びわ湖ホール・iichiko総合文化センター・札幌コンサートホールKitara・やまぎん県民ホール 共同制作
沼尻竜典作曲 歌劇《竹取物語》

2024.11/23(土・祝)、11/24(日)各日14:00 びわ湖ホール 大ホール 
問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 
https://www.biwako-hall.or.jp/
12/1(日)14:00 大分/iichiko総合文化センター iichikoグランシアタ 
問:iichiko総合文化センター097-533-4004 
https://emo.or.jp/
12/7(土)15:00 札幌コンサートホールKitara 大ホール 
問:Kitara チケットセンター011-520-1234 
https://www.kitara-sapporo.or.jp/
12/15(日)14:00 やまぎん県民ホール 大ホール 
問:やまぎん県民ホール チケットデスク023-664-2204 
https://yamagata-bunka.jp/