独特の旋律美に彩られたコンチェルトを話題の新星と
今年の夏から新しいシリーズとして始まった、新日本フィルハーモニー交響楽団の「“新しい風”名曲コンサート」が興味深い。「クラシック界の新星を発掘・紹介し、名曲とともにお届けするクラシック音楽入門編の演奏会」というコンセプトだが、シリーズとして企画し、経験豊かな指揮者が登壇することで名曲の真価をしっかり伝え、「新星」としてコンクールや演奏会での実績がある俊才が登場する。入門編でありながら、熱心な聴き手にも聴きどころ十分のシリーズなのである。
10月の第2回の「新星」はヴァイオリンの橘和美優。東京音楽コンクール第2位&聴衆賞、昨年ロン=ティボー国際音楽コンクール第5位入賞で注目を集めた。橘和のみずみずしく純度の高い音色で奏でられるのは、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。屈指の人気コンチェルトを清新な演奏で楽しめる好機だ。指揮者は現代の名匠のひとり、大友直人。協奏曲での安定のサポートはもちろんのこと、前後のオーケストラ名作でも円熟味を増した演奏を聴かせてくれるだろう。最初はシベリウスの交響詩「フィンランディア」。ロシアの支配下にあったフィンランドの独立の機運を高めた一作。後半はベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。充実の演奏で体験すれば、初めてでも何回目でも大きな感銘を受けること間違いなしの名曲。いずれもクラシック音楽の王道パターンのひとつ、「苦悩から勝利へ」という展開が感動を生む作品でもある。大友と新日本フィルの充実のサウンドで味わう。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年9月号より)
2024.10/20(日)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp