バンドネオンで魅せるガーシュウィンの世界
19世紀のドイツでパイプオルガンの代用楽器として生まれ、20世紀に入ってから南米のタンゴ演奏で盛んに使われるようになったバンドネオン。若き俊才・三浦一馬は、そうした音楽史を踏まえながらも、「タンゴに特化せず、あらゆる可能性に挑戦して、この楽器でやれることはすべてやりたい」と熱く語る。
今回、約3年ぶりに発表する新譜『三浦一馬プレイズガーシュウィン』では、過去3枚でテーマにしたタンゴから離れて新境地へ。ジャズとクラシックを融合し、独自の作風を確立したガーシュウィンを取り上げている。
「両親がガーシュウィンのレコードを自宅でかけていたので、4〜5歳の頃から自然と好きになりました。中でもお気に入りだったのが、アンドレ・プレヴィン弾き振りの『ピアノ協奏曲 ヘ調』です」
三浦はガーシュウィンをピアソラと同じくらい敬愛しているという。
「音楽は対照的ですが、ニューヨークとブエノスアイレスという共に移民が作り上げた都市で活躍した作曲家。それぞれの街の匂いや人々の声を音楽でみごとに表現していると思います。僕もいつの日か、彼らのように自分の街を代弁する音楽を作りたい。そんな夢を思い描く度、彼らへの憧憬と尊敬の念が強まっていきます」
収録曲は、「サマータイム」「ラプソディ・イン・ブルー」など全10曲。
「クラシック、ジャズ、ミュージカルなど様々な領域で活躍した作曲家なので、それらの魅力をバランスよくお伝えできる選曲を心がけました。例えばクラシックだと、ピアノ曲の『3つのプレリュード』。有名なハイフェッツのヴァイオリン編曲の薫りを残しつつ、僕自身の手でピアノとのデュオに編曲してあります。ミュージカルでは、『アイ・ガット・リズム』などの起源にもなった『ガール・クレイジー』の五重奏版(原曲は管弦楽)をぜひ。荒井英治さん(ヴァイオリン)、黒木岩寿さん(コントラバス)、山田武彦さん(ピアノ)、石川智さん(パーカッション)という最高の共演者に恵まれたこともあり、聴きごたえのある演奏になっていると思います」
6月には東京、愛知、大阪の3ヵ所で、五重奏によるCD発売記念コンサートを開催。収録曲の他、得意のピアソラも演奏予定だというから、三浦が2人の作曲家に寄せる想いをたっぷり味わえそうだ。また東京公演は、2013年にオープンしたばかりのEX THEATER ROPPONGIで行われる。最新の音響と照明を完備した空間は、バンドネオンの新境地を切り拓く彼に、まさにぴったりな選択と言えるだろう。
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)
三浦一馬 プレイズ ガーシュウィン & ピアソラ
6/2(火)19:00 ウィンクあいち
発売中
問:中京テレビ事業052-957-3333
6/4(木)19:00 EX THEATER ROPPONGI
3/21発売
問:ディスクガレージ050-5533-0888
6/13(土)18:00 あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
3/23発売
問:テレビマンユニオン03-6418-8617
CD『三浦一馬 プレイズ ガーシュウィン』
ビクター
VICC-60924
¥3000+税
4/8(水)発売