レジス・パスキエ(ヴァイオリン)

大人の味が染み渡る、本流の至芸

©Alavaro Yanez
©Alavaro Yanez
 馥郁たる香り立つノーブルなヴァイオリニストといえば、まずはレジス・パスキエが思い浮かぶ。今年70歳の彼は、有名なパスキエ一家の一員としてフランコ・ベルギー派の伝統を伝える、フランスの人間国宝的な名奏者だ。2012年トッパンホールにおけるリサイタルでは、風格と品性を湛えた唯一無二の芸を披露。特にエネスクのソナタでは、技術があっても真似ることのできない、深遠なる名演を聴かせた。そしてこの3月、再び同ホールに登場する。演目はむろんお国ものが中心。ルクレールとサン=サーンスのソナタを、本場の名匠の演奏で聴けるのは貴重だし、前回初期作品の方が弾かれたラヴェルのソナタも、今回は嬉しいことに円熟期の名作を耳にできる。プロコフィエフのソナタも、若手が届かぬ至芸で曲を再認識させること必至。グァルネリ・デル・ジェスの名器「クレモナ」のゴージャスで滴るような音色もまた、全ての魅力を高める。熟成された大人の音楽、本流の歴史と経験が滲む高貴で味わい深いヴァイオリン演奏を、ぜひご堪能あれ!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年3月号から)

3/24(火)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
http://www.toppanhall.com