ハンガリーをテーマに2台ピアノの醍醐味を
2006年から活動を開始し、来年結成10周年を迎えるパスカル・ドゥヴァイヨンと村田理夏子のデュオは、まさに“現在”(いま)が聴き頃だ。ここ数年間、拠点のベルリンで開催した全公演が満席になるなど、大きな注目を集めている。4月に4年ぶりに行われる日本公演のタイトルは、「洪牙利(ハンガリ)の魂」。これは今年没後70周年のバルトークを記念した企画だそうだ。
「バルトークの『2台ピアノと打楽器のためのソナタ』を取り上げます。このソナタは、ピアノ・デュオというレパートリーの中で最も美しい作品だと思います。色彩感が非常に豊かな上、心地よくて聴きやすい素晴らしい曲。ただ、演奏家がそれを的確に表現するのは非常に難しい」(ドゥヴァイヨン)
ティンパニ、シロフォン、シンバル、トライアングルなど、多くの打楽器を用いた打楽器パートには2人の若手日本人、大澤香奈江と小島快を起用。
「2人とも桐朋学園の出身で、現在はパーカッションアンサンブルグループ『打BLITZ!』の一員として活躍中の実力派。ドゥヴァイヨンが桐朋の特任教授をしている縁で知り合いました。先日、初めて一緒にこの作品を合わせたのですが、授業で1年間しっかり勉強してきたそうで、細部まで知り尽くしていたので共演が楽しみです」(村田)
この大曲の前後に演奏するのも、やはりハンガリーにゆかりのある作品。シューベルト「ハンガリー風ディヴェルティメント」と、ブラームス「2台ピアノのためのソナタ」だ。
「『ディヴェルティメント』は、シューベルトがハンガリーのエステルハージ伯爵家の2人の娘にピアノを教えていた頃に作曲した連弾曲。作曲者がこの地で感銘を受けた瑞々しいインスピレーションにあふれています。そしてブラームスのソナタは、傑作として名高いピアノ五重奏曲の基になった作品。彼の音楽は全ジャンルが“交響的”ですね。その管弦楽的な色彩をいかに引き出すかが面白さですし、大きな課題でもあります」(ドゥヴァイヨン)
結成10周年を見据え、「レパートリーをさらに拡げていきたい」と語る2人。具体的な展望として、ラフマニノフのピアノ・デュオ全作品、ベートーヴェン交響曲の2台ピアノ版など、実に魅力的な作品が多数並んでいる。そのライヴが、日本のファンの前で一日も早く実現することを心から祈りたい。
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年3月号から)
パスカル・ドゥヴァイヨン&村田理夏子ピアノデュオ・リサイタル
『洪牙利(ハンガリ)の魂』
4/4(土)18:30 東京文化会館(小)
問:コンサートイマジン03-3235-3777
http://www.concert.co.jp
他公演(プログラムは異なります)
3/14(土) 熊本市健軍文化ホール 問:日本ピアノ教育連盟九州南部支部096-380-0268
3/21(土・祝) 藤沢リラホール 問:0466-22-2721
4/12(日)宗次ホール 問:052-265-1718
4/13(月) 神戸女学院大学音楽学部音楽館ホール 問:0798-51-8550