フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2024 公演の聴きどころ

祝20回! 国内最大級のオーケストラの祭典

 クラシック音楽が暑い夏をより熱く盛り上げる「フェスタサマーミューザ KAWASAKI」が20回の節目を迎える。キャッチフレーズは「夏音(サマーミューザ)! ブラボー20周年」。おなじみとなった大作曲家キャラクターたちも今年は夏祭り風の和テイスト衣装でお出迎え。例年どおり首都圏の9つのオーケストラに加え、佐渡裕指揮・兵庫芸術文化センター管弦楽団(>>関連記事)と浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラが川崎に集結。ピアノやオルガン、ジャズまで、全19公演の多彩なプログラムが繰り広げられる。

 主会場のミューザ川崎シンフォニーホールを本拠地とする東京交響楽団は、今年も開幕と閉幕を担うホスト役。7月27日オープニングコンサートは、音楽監督ジョナサン・ノットが昨年に続いて、意外にもあまり振ってこなかったというチャイコフスキーの交響曲に挑む。今回は第2番「ウクライナ(小ロシア)」と第6番「悲愴」。正指揮者・原田慶太楼が振る8月12日フィナーレコンサートは話題満載。最新テクノロジーによる謎のバーチャルアーティスト・潤音ノクトが弾く「ラプソディー・イン・ブルー」。そのステージやいかに。“ゴジラ”が聴こえる伊福部昭「ヴァイオリンと管絃楽のための協奏風狂詩曲」も楽しみ(独奏=川久保賜紀)。

 左より:ジョナサン・ノット ©K.Miura/原田慶太楼 ©37 Frames
潤音ノクト ©portameta Project/川久保賜紀 ©Yuji Hori

 東響はもう1公演、8月3日「出張サマーミューザ@しんゆり!」にも登場するが、ここでグリーグのピアノ協奏曲を弾く若手・田久保萌夏は当音楽祭20年の象徴のような存在だ。彼女のピアニスト人生は、サマーミューザ恒例の小川典子の子ども向け公演「イッツ・ア・ピアノワールド」で、舞台上に座ってプロの音を間近に感じるという名物企画の体験の衝撃から始まった。こういう人が出てくるのだから20年の歴史ってすごい。その「イッツ・ア・ピアノワールド」は7月28日の開催。

 サマーミューザ初登場の沖澤のどかが7月31日読響を振る。昨年末には彼女のデビューCDとなるシベリウスもリリースしたコンビ。現代屈指のリスト弾きである阪田知樹と沖澤の初共演が実現するリストのピアノ協奏曲第2番にも注目だ。後半はサン=サーンス交響曲第3番(オルガン=大木麻理)。

 初登場があれば、これが最後の“惜別”も。今年限りでの引退を表明している井上道義が、8月2日新日本フィルを振る。1983〜88年に音楽監督、99〜2000年には楽団初のマーラー交響曲全曲演奏に取り組んだ仲間同士。この日もマーラー「夜の歌」を聴かせる。演奏前には井上のトークも。

【指揮者変更】
8/2 新日本フィル公演に出演を予定していた井上道義氏(指揮)は、左急性腎盂腎炎により約1か月間治療に専念すべきとの医師の診断を受けたため、やむを得ず降板することとなりました。
つきましては、指揮をジョナサン・ノット氏(東京交響楽団音楽監督)に変更して開催いたします。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。(7/29主催者発表)
https://www.kawasaki-sym-hall.jp/news/detail.php?id=1952

左より:田久保萌夏/小川典子 ©Patrick Allen operaomnia.co.uk/沖澤のどか ©Felix Broede/阪田知樹 ©Ayustet/井上道義 ©Yuriko Takagi

 1995年から続く世界最大規模の管楽器の祭典が浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル。そのアカデミー教授陣ら、国内外のトップ奏者たちによる「ワールドドリーム・ウインドオーケストラ」が8月3日に登場する。原田慶太楼の指揮で、コンクール課題曲から定番まで、究極の吹奏楽名曲集。

 オーケストラの祭典の中で“オペラ”が目を引く。8月8日神奈川フィルは、オペラの匠・園田隆一郎の指揮で、1924年没のプッチーニと同年生まれの團伊玖磨という、「そう来たか!」という組み合わせの“100年”プログラム。ソプラノ木下美穂子とテノール笛田博昭の出演。

 8月9日、日本フィルは芸術顧問の広上淳一と登場。服部百音のメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲に注目だ。日本フィルと彼女は2月に九州ツアーで短期間に繰り返しメンデルスゾーンをみっちり共演して、完全無欠の親密なアンサンブルを熟成済み。喜びの再会が川崎で。

左より:園田隆一郎 ©Fabio Parenzan/広上淳一 ©Masaaki Tomitori/服部百音 ©YUJI HORI/藤岡幸夫 ©Shin Yamagishi/務川慧悟 ©Yuji Ueno

 8月11日東京シティ・フィルは首席客演指揮者の藤岡幸夫と。人気・実力ともにその一挙一動が注目を集める務川慧悟とのラフマニノフのピアノ協奏曲第3番に名演の予感。メインは生誕150年のホルスト「惑星」。

 来場時、周辺の飲食店で利用可能な優待券が配布されるのも、ちょっとうれしいオマケ。真夏の川崎を音楽で、そしてグルメで堪能しよう。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2024年7月号より)

フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2024
2024.7/27(土)~8/12(月・休) ミューザ川崎シンフォニーホール、昭和音楽大学 テアトロ・ジーリオ・ショウワ
問:ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200
https://www.kawasaki-sym-hall.jp/festa/
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

特集:フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2024
今年で20回目の開催となる日本最大級のオーケストラの祭典「フェスタサマーミューザ KAWASAKI」。ホスト・オーケストラの東京交響楽団をはじめとする首都圏の9団体に、初登場の佐渡裕&兵庫芸術文化センター管弦楽団、9年ぶりの吹奏楽企画となる「浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラ」を加えた全11団体が日替わりで登場。「夏音(サマーミューザ)!ブラボー20周年」を合言葉に熱き競演を繰り広げる。その他、小曽根真が次世代のミュージシャンたちと一夜限りのセッションを披露する「サマーナイト・ジャズ」、ライプツィヒ聖トーマス教会のオルガニスト、ヨハネス・ラングによる「真夏のバッハ」、ホールアドバイザー小川典子のライフワーク「イッツ・ア・ピアノワールド」と恒例企画も充実の内容。アニバーサリーにふさわしい珠玉の19公演。ぜひ会場で聴き比べたい。