NBS 旬の名歌手シリーズ - X
ソンドラ・ラドヴァノフスキー(ソプラノ) & ブライアン・ジェイド(テノール) オペラ・デュオ・コンサート

強靭な声を魔術のように操る奇跡のふたり

左:ソンドラ・ラドヴァノフスキー photo:Michael Cooper
右:ブライアン・ジェイド photo:Simon Pauly

【公演中止】
「ソンドラ・ラドヴァノフスキー&ブライアン・ジェイド オペラ・デュオ・コンサート」は、ラドヴァノフスキーが副鼻腔炎、および重度の中耳炎を発症し来日できなくなったため、公演中止となりました。詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。(6/21主催者発表)

https://www.nbs.or.jp/publish/news/2024/06/post-968.html

 声の威力と魔力に観客が圧倒され続ける、衝撃的なコンサートが実現する。

 ソンドラ・ラドヴァノフスキーは強靭な声と柔軟な表現で、《ノルマ》などベルカントの歌唱に生命を吹き込んできた。それはMETの映像でもおなじみだが、筆者は昨年、イタリアで彼女の歌唱に打ちのめされ、スケールも質も想像を絶していたと思い知らされた。

 《マクベス》のマクベス夫人では、力強いコロラトゥーラを難なくこなすばかりか、稀代の悪女の複雑な心の動きを、声色だけで完璧に掘り下げた。豊麗な声で圧するように歌われがちな《トゥーランドット》の表題役も、彼女は強弱の幅を大きくとって明暗を自在に変化させ、この複雑な女性の狂気も、虚勢も、繊細さも、ニュアンスたっぷりに描ききった。

 それは奇跡のような歌唱だったが、そんな彼女がこれまた奇跡的な歌手と共演する。特にポストコロナにおいて、世界の主要歌劇場で熱狂を呼び起こし続けているブライアン・ジェイドだ。彼こそは「絶滅危惧種」の真正ドラマティックテノールで、光沢がある甘い声を少しも力まずに張り上げ、輝かしい響きを作りながら、弱音へと自然に落とす。その際、表現されるのはラドヴァノフスキーと同様の無限のニュアンスで、ジェイドが歌うと、劇的なアリアが力強さはそのままに、思いのほか表情豊かな曲であったと知らされる。

 デュオ・コンサートで歌われるのは、《運命の力》や《オテロ》から《トゥーランドット》《アンドレア・シェニエ》まで、奇跡の2人がいま一番輝く7つの愛の物語。これ以上の声の饗宴は想像がつかない。
文:香原斗志
(ぶらあぼ2024年6月号より)

2024.7/6(土)15:00 東京文化会館【公演中止】
問:NBSチケットセンター03-3791-8888 
https://www.nbs.or.jp