フィナーレは一柳慧の「第九」
都響が定期演奏会に組み込んでいる現代音楽シリーズ『日本管弦楽の名曲とその源流』は別宮貞雄のプロデュースで始まり、途中、一柳慧にバトンを受け継ぎ、本公演で20回を数える。プログラミングには意外性を感じることも多く、なかなか視点がユニークだった。今回が最終回とのことで、ちょっと寂しい。
指揮にはフィンランドを中心に活躍する中堅ハンヌ・リントゥが登場。同国第2の都市にあるタンペレ・フィルの音楽監督を務めた後、昨年フィンランド放送響の首席指揮者に就任した。客演歴も世界の諸都市に及ぶなど精力的な活動を見せている。
プログラムだが、まずリントゥのお国の作曲家シベリウスの交響詩「夜の騎行と日の出」から。巧みな描写力をもった佳作だ。続いてルトスワフスキの「チェロ協奏曲」(1970)。東西冷戦期にあってソ連を中心とする共産圏では前衛芸術は押しなべて抑制されていたが、ポーランドは西側の現代音楽界にも影響を与えた数少ない例外。その先頭を走っていたのがルトスワフスキで、本作は鉄のカーテンの向こう側で育まれた独自の作風を示している。独奏はピーター・ウィスペルウェイ。こうした世界的奏者が日本で現代ものを披露するのも珍しい。
当夜のメインでシリーズ掉尾を飾るのは、企画者でもある一柳慧の都響委嘱による新作・交響曲第9番。近年の一柳は年齢を感じさせないますます旺盛な創作力でオペラや協奏曲、舞台作品などの大作を次々と発表している。彼の“第九”はどんな作品になるのだろう。片山杜秀とのプレトークではその聴きどころも開陳されるはずだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年1月号から)
第783回 定期演奏会Bシリーズ
2015.1/23(金)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp