下野竜也(指揮) 読売日本交響楽団

マーラーとタケミツの深遠なる世界へ

 首席客演指揮者というポストの効力を最大限に活用するがごとく、読売日本交響楽団の定期演奏会では、音楽シーンに新たな問題提起をするようなプログラムで客席を唸らせてくれる下野竜也。1月の『読響メトロポリタン・シリーズ』および『サントリーホール名曲シリーズ』では、マーラーの交響曲第5番と武満徹の作品を組み合わせたプログラムで両者の特徴を引き出す。
 下野+読響のマーラーといえば、これまで第1番「巨人」や第2番「復活」などが取り上げられ、いずれも見事な棒さばきとスコアの細部にまで踏み込んだアプローチが耳に残った。全体としては華美にならず地味にならず、しっかりと地に根を張っているような音楽の中、作品をよく知る人でも「なるほど、ここはこんな音だったのか」と思うような新鮮さがある。第4楽章に有名な「アダージェット」を擁する交響曲第5番は、演奏される機会が多い曲だが、それだけに下野流の音楽作りがこの作品の新しい一面を見せてくれるだろう。
 コンサートの前半には、マリンバを極めるべく多彩な作品を演奏している小森邦彦がソリストとして登場。武満のマリンバ協奏曲「ジティマルヤ」(歌の花束)を演奏する。武満らしいファンタジーが豊かに鳴り響くこの作品は、聴き手のマリンバに対する印象を大きく変えるだろう。ヴァイオリン・セクションを全て欠いたオーケストラの音色も聴きものであり、「武満=静、マーラー=動」という対比も楽しめるはずだ。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年1月号から)

第13回 読響メトロポリタン・シリーズ
2015.1/23(金)19:00 東京芸術劇場コンサートホール
第578回 サントリーホール名曲シリーズ
2015.1/24(土)14:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
http://yomikyo.or.jp