原田慶太楼(指揮) 東京交響楽団

邦人作品の紹介を続けるマエストロこだわりのプログラム

左;原田慶太楼 ©MASATOSHI YAMASHIRO
右:オルガ・カーン ©Chris Lee

 東京交響楽団の正指揮者・原田慶太楼が3月の定期演奏会に登場。魅力の詰まったプログラムを聴かせる。

 前半は藤倉大の「Wavering World」で始まる。この作品はシアトル響をはじめとする複数のオーケストラの共同委嘱作で昨年初演されたが、シアトル響の希望はシベリウスの交響曲第7番とカップリングできる曲ということだった。これは交響曲があまり好きではないという藤倉が好きなシンフォニーで、そこから試行錯誤の上に出来上がったのが「Wavering World」だったというわけだ。とはいえ、単なる引用やオマージュで済ませないのが藤倉らしい。北方神話に強く影響を受けたシベリウスに倣い、日本の神話の世界に沈潜しその世界観を表現した本作は、昨夏にパシフィックフィルハーモニア東京が日本初演を果たしたが、今回はこの後に作曲時に想定されていたシベリウスの7番を置いた。本来のコンテクストでの本邦初演奏で、どのような相乗効果が出現するのかに注目したい。

 後半はロシア出身のピアニスト、オルガ・カーンを招いてラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。カーンは2001年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの覇者で、スケールの大きな演奏でその後も着実にキャリアを重ねている。財団を立ち上げるなど後進の育成にも熱心で、2016年からは自身の名前を冠した国際コンクールも行っている。今回の共演は原田が強く希望して実現したもので、ともにアメリカでキャリアを切り開いた二人ならではの熱い演奏が繰り広げられるのではないか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年3月号より)

第718回 定期演奏会 
2024.3/30(土)18:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
https://tokyosymphony.jp