高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

シーズン・ラストはコンビ9年目の集大成を

高関 健 ©上野隆文

 1860年生まれのマーラー。1865年生まれのシベリウス。同時代のヨーロッパを生きて、対照的な方向性の作品をのこした二人の大作曲家を組み合わせた演奏会が、3月の東京シティ・フィル定期で実現する。シベリウスは最後の管弦楽大作となった交響詩「タピオラ」で、フィンランドの森の神秘的な空気感に満ちた抽象的な音楽。マーラーは交響曲第5番で、葬送で始まり舞曲を経て勝利で終わる、多様な音楽と感情が詰め込まれた人間的で濃厚な音楽。両者のセンスを端的に示すような二つの傑作を並べて聴くことで、その対照性ばかりか相通じるところも体感できるに違いない。

 このプログラムを聴かせるのは、東京シティ・フィル常任指揮者の高関健。彼らの“3月定期”といえば、コロナ禍初期の2020年が延期を経て曲目変更になった後、翌21年からはショスタコーヴィチ第8番、第7番、マーラー第9番といった交響曲の大作を毎年取り上げて、どの年もシーズン全体の集大成的な名演奏となっている。今回もシベリウスの幽玄な世界からマーラーの多彩で壮大なサウンドの爆発まで、好調の続く高関&東京シティ・フィルが特別な演奏を作り上げるだろう。

 そういえば、マーラー5番の第4楽章「アダージェット」を有名にした映画『ベニスに死す』は、伝染病の急な流行がストーリーの背景になっていた。もちろん楽曲自体とは関係ないことだが、生きる喜びを謳歌するような第5楽章が続くことを思うと、感慨深いものもある。3月、翻弄された数年間を吹き飛ばす快演を楽しみたい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年2月号より)

第368回 定期演奏会 
2024.3/8(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp