相性抜群のデュオを個性的なプログラムで満喫
パリ音楽院の室内楽科教授とピアノ科准教授を務めながら、ソリストおよび室内楽奏者として日仏で活躍を続ける上田晴子。彼女はこの2月Hakuju Hallで、チェロの笹沼樹とのデュオ・リサイタルを行う。
カルテット・アマービレなど多方面で光を放つ笹沼との相性は抜群だ。
「2019年にブラームスのピアノ五重奏曲で初共演した際、リハーサルの最初の5分間でお互いピンとくるものがありました。そこで21年に初のデュオ・リサイタルを行ったところ、何十回も共演してきたかのように上手くいったので、以後定期的に共演しています。彼とは音の聴き方や大事な和音の捉え方が似ていて、和声の中にこの音が欲しいと思った時にピタッときますし、目を閉じていてもタイミングや呼吸が合います」
Hakuju Hallでのデュオは、22年9月以来2度目。「やってよかった」と語る前回は、プロコフィエフやR.シュトラウス等を披露したが、今回は一転ラテン系に目を向けた。
「まず、前から一緒に弾きたいと話していたプーランクのソナタが決まり、いつもアンコールで第2楽章を弾いていたカサドのソナタが加わって、フランスものと私の大好きなスペイン音楽になりました。さらにあまり知られていない曲を入れたいとの思いも加味して、プログラムが決まっていきました」
ゆえに同編成としては稀な内容となっている。
「カサドの『スペイン古典様式によるソナタ』は、スペイン人でチェリストの作曲者が思う『古典風』の在り方が面白い。コブシのようなものも入っていますし、パコ・デ・ルシア(フラメンコ・ギターの大家)風の要素も混じっています。次のグラナドスの歌劇《ゴイェスカス》の『間奏曲』は、“ザ・スペイン”のイメージ。ファリャの『7つのスペイン民謡』は、色々な地方の歌なので表現が難しいのですが、一度合わせた時、笹沼さんは初見で完璧に弾きました。彼はスペインのリズムが身に付いているようです。
プーランクの『陽気な歌』の〈セレナード〉も元は歌曲で、チェロ用の編曲譜を見ていいなと思いました。そしてプーランクの『チェロとピアノのためのソナタ』には、少しバッハ的な要素が入っています。特に第2楽章は宗教心を感じる素晴らしい音楽。でもプーランクは二面性があって、他の楽章は洒脱な面が目立ちます。それにチェロは大変で運動神経が良くないと弾けません」
本公演では、弦や管の曲におけるピアノの役割を「全部合わせてオーケストラのようにすること。タッチや音色もその場面に合う楽器を考えて弾きます」と話す彼女のピアノも要注目。「温かくてリラックスできる」Hakuju Hallの親密な空間に響く二重奏を、大いに満喫したい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年1月号より)
笹沼樹 & 上田晴子 DUO リサイタル
2024.2/28(水)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700
https://hakujuhall.jp