藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

劇伴音楽の匠による新作を世界初演

左より:藤岡幸夫 ©青柳 聡/神尾真由子 ©Makoto Kamiya/石丸由佳

 藤岡幸夫は吉松隆作品を積極的に紹介するなど、「分かりやすく面白い同時代の音楽」の開拓に並々ならぬ意欲で取り組んできた指揮者。その藤岡が近年ほれ込んでいるのが菅野祐悟だ。テレビドラマに映画に、とその界隈では長年第一線で活躍、知らないものがいない才能だったが、もともとクラシックやライブでのコンサートに関心があった菅野に藤岡が交響曲の作曲を勧め、初演にこぎつけたのが2016年のこと。その後、膨大な量の劇伴をこなしつつ、交響曲第2番をはじめ、サクソフォン(初演:須川展也)、チェロ(初演:宮田大)の協奏曲といった大作を次々に発表、いずれも好評をもって迎えられている。

 その菅野が新たに手掛けたのはヴァイオリン協奏曲だ。ソリストは世界で活躍する神尾真由子。耳につく旋律、聴き手の心を揺さぶる管弦楽法など、これまでの菅野作品の美質は本作にも引き継がれるだろうが、今回はヴァイオリンという楽器の特性をどう引き出してくるのかにも注目したい。

 またプログラミングも粋だ。ロッシーニ《チェネレントラ》序曲で始まり、菅野作品の初演の後、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」(オルガン独奏:石丸由佳)につなぐ。軽やかなメロディーが軽快に弾むロッシーニの序曲、フランスの交響曲運動の中核的役割を担ったサン=サーンスの代表作に菅野作品を挟むというアイディアもしゃれているが、歴史上の傑作と肩を並べる新作の充実度とエンターテインメント性を示そうとする意図もあるはずだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年1月号より)

第367回 定期演奏会 
2024.2/2(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
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