大阪の4つのオーケストラが2024-25シーズンプログラムを共同発表!

左より:大阪響常務理事 赤穗正秀、関西フィル常務理事 大野英人、崔文洙、名陽木工取締役CEO 橋口直弘、松浦奈々、木村悦子、森下幸路、大阪フィル楽団事務局事務局長 福山修、日本センチュリー響専務理事 小田弦也

 大阪を本拠地とする4つのオーケストラ、大阪交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団の2024-2025シーズンプログラム共同発表会が11月27日、フェニーチェ堺で行われた。

 上記4団体による共同発表会は2018年にはじまり今年で6回目の開催。今回は初の試みとして各楽団のコンサートマスターによるアンサンブルが披露され、森下幸路(大阪響)、松浦奈々(日本センチュリー響)、木村悦子(関西フィル)、崔文洙(チェ・ムンス 大阪フィル)の4名がテレマンの4つのヴァイオリンのための協奏曲 ハ長調 TWV 40:203を演奏した。

 コンサートマスターのコメントとともに各楽団のシーズンプログラムを紹介する。

●大阪交響楽団

 首席ソロコンサートマスターの森下は、大阪響の名誉指揮者を務め、今年7月に他界した外山雄三について「僕が30歳の時、仙台フィルのコンサートマスターに採用していただいてからのお付き合いでした。お亡くなりになる約2ヵ月前までタクトを振られていたので本当に本望だったと思います」と想いを述べた。

左:小味渕彦之(司会) 右:森下

 大阪響は常任指揮者の山下一史、ミュージックパートナーの柴田真郁、首席客演指揮者の髙橋直史を軸に、定期演奏会8公演を開催。
 注目は「外山雄三追悼」と題された第271回(24.4/26)。山下の指揮で、ヴァイオリン協奏曲第2番など、外山の1960年代の作品を演奏する。外山と前述の協奏曲でソリストとして共演経験のある森下が、今回も独奏を務める。
 他にも山下が大阪響とのライフワークとするR.シュトラウスから組曲「町人貴族」、交響詩「ドン・ファン」、「死と浄化」を披露する第278回(25.3/14)、柴田と、並河寿美、笛田博昭、青山貴、山下裕賀ら日本を代表する歌い手がヴェルディの歌劇《運命の力》(演奏会形式)で共演する第277回(25.2/9)も目を引く。
 また、1日2公演を行う名曲コンサートは5回開催。「菊池洋子の“ベートーヴェン協奏曲チクルス”Vol.2」と題された第133回(24.8/10)では、ピアノ協奏曲第2番などを披露。このチクルスをCD化することも発表された。

●大阪フィルハーモニー交響楽団

 大阪フィルのコンサートマスターとして10年以上活躍している崔。近年の楽団の変化について以下のように語った。
「尾高忠明音楽監督のもと、元々大阪フィルが持っているゴージャスなサウンドに機能性が加わるよう、厳しいリハーサルを積んでいます。良い意味で進化を感じています」

 大阪フィルは新シーズンで、ウィーン・フィルの首席クラリネット奏者ダニエル・オッテンザマーを、新設したアーティスト・イン・レジデンスに迎える。
 オッテンザマーは、第580回定期演奏会(24.7/19、7/20)でウェーバーの協奏曲第2番のソリストを務めるほか、同じく7月の住友生命いずみホール特別演奏会では指揮者なしの公演を崔とともに率いる。25年1月の新春名曲コンサートとあわせて計3回登場の予定。
 尾高は監督就任後7シーズン目となる。定期演奏会のほかにテーマを絞ったシリーズを開催し、今年はメンデルスゾーンに集中的に取り組んでいるが、新シーズンは生誕200年のブルックナーにフォーカスする。ブルックナーは朝比奈隆監督時代から育んできた大阪フィルを象徴するレパートリーのひとつ。第585回定期演奏会(25.2/14、2/15)で交響曲第4番を取り上げるほか、「シンフォニストの理想を求めて」と銘打った全3回のシリーズで、交響曲第0番~2番までの3曲をモーツァルトの後期交響曲3曲とカップリングする。

●関西フィルハーモニー管弦楽団

 トロント交響楽団で長く活躍した木村悦子は、 今年4月、関西フィルのコンサートマスターに就任した 。「関西フィルは明るく、温かい雰囲気を持つオーケストラで、とても楽しく演奏できています。このオーケストラにすっかりほれ込んでいます」とすでに新しい環境にもなじんでいる様子。

 関西フィルの桂冠名誉指揮者を務めていた飯守泰次郎が今年8月、この世を去った。長く活動を共にしてきた同楽団は、音楽的な支柱であった飯守への思いを込め、直後の練習で黙とうを捧げたという。

 音楽監督のオーギュスタン・デュメイ、首席指揮者の藤岡幸夫に加え、今年4月に鈴木優人が首席客演指揮者に就任。さらに10月にはベルギー、フランス、ドイツの3ヵ国を巡るヨーロッパツアーを行った。いずれも満席で、特にパリ公演は熱狂的なスタンディングオベーションに包まれたという。

 来季の定期演奏会で目を引くのは世界的チェリスト マルク・コッペイがサン=サーンスの協奏曲第1番を弾く第351回(24.11/29)。デュメイはラヴェル「ボレロ」などを指揮するほか、サン=サーンス「ミューズと詩人たち」ではヴァイオリンを弾きコッペイと共演する。
 日本人作曲家の紹介に力を注ぐ藤岡は、第345回(4/29)で大阪府箕面市出身の新進、林そよかのヴァイオリン協奏曲(独奏:木嶋真優)、菅野祐悟のピアノ協奏曲(独奏:角野隼斗)の初演も担う。
 鈴木は大阪国際フェスティバル(6/12)で独奏にバンドネオンの三浦一馬、ヴァイオリンの成田達輝を迎え、自らが編曲したヴィヴァルディ「四季」とピアソラ「ブエノスアイレスの四季」、そしてストラヴィンスキーの「春の祭典」を振る。

●日本センチュリー交響楽団

 日本センチュリー響のコンサートマスター松浦は来シーズンのみどころについて「ついにハイドンマラソンがゴールを迎えます。長い道のりでしたが、どれも素晴らしい作品で、いい経験になりました」とコメント。

 現首席客演指揮者の久石譲が2025年4月から音楽監督に就くことが発表されたばかりの日本センチュリー響。橋渡しとなる来シーズンは、飯森範親が首席指揮者として迎える最後の年。また、ハイドンの交響曲全曲演奏・録音プロジェクト「ハイドンマラソン」の完走、24年12月に楽団創立35周年を迎えるなど節目のシーズンでもある。
 全8回の定期演奏会には、飯森、久石、ミュージックアドバイザーの秋山和慶がそれぞれ2回ずつ登壇。客演では、ハンガリーの巨匠ヤーノシュ・コヴァーチュ、仙台フィル指揮者の太田弦がタクトを執る。国際コンクールでの活躍が光るソリストが登場することも要注目。ピアノは小林愛美(第281回 4/12)、阪田知樹(第282回 6/28)、萩原麻未(第285回 10/24)、亀井聖矢(第286回 12/25)、ヴァイオリンでは地元豊中市出身の前田妃奈(第284回 9/21)らが名を連ねた。

 今年マカオ公演を成功させた同楽団は、新たな広報戦略として外国人観光客へのアピールにも力を入れるという。また、大好評のパシフィックフィルハーモニア東京とのスチューデントパスも継続。25歳以下(誕生日が1999年4月2日以降)の学生が対象で、両楽団の計33公演が5000円で聴き放題。24年1月の受付開始を予定している。


 会見では、大阪の春の風物詩「大阪4オケ祭」の概要も公開された。節目の10回目となる2024年の公演は、スペシャル企画として京都市交響楽団と兵庫芸術文化センター管弦楽団も参加、「関西6オケ!」と銘打たれた(24.4/20)。 シェフ級の指揮者とともにそれぞれが演奏を披露する。

【Information】
第62回大阪国際フェスティバル2024
関西6オケ! 2024
2024.4/20(土)13:00 フェスティバルホール

山下一史(指揮) 大阪交響楽団
R.シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」組曲

尾高忠明(指揮) 大阪フィルハーモニー交響楽団
エルガー:エニグマ変奏曲

下野竜也(指揮) 兵庫芸術文化センター管弦楽団
ペルト:カントゥス—ベンジャミン・ブリテンの思い出に
ブリテン:シンフォニア・ダ・レクイエム

藤岡幸夫(指揮) 関西フィルハーモニー管弦楽団
シベリウス:交響曲第5番

飯森範親(指揮) 日本センチュリー交響楽団
ドビュッシー:「海」管弦楽のための三つの交響的素描

沖澤のどか(指揮) 京都市交響楽団
プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」組曲からセレクション

問:フェスティバルホール チケットセンター06-6231-2221
https://www.festivalhall.jp