日本フィル・3月東京定期はカーチュン・ウォンとの待望のマーラー「復活」

左より:カーチュン・ウォン ©Ayane Sato/吉田珠代/清水華澄 ©Mariko Tagashira

 カーチュン・ウォンにとって、キャリアの初めからマーラーは最も重要な作曲家の一人だった。ドイツで学んだカーチュンは、2016年、グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールで優勝し国際的な脚光を浴びた。これはマーラーの孫娘がバンベルク響と創設したもので、この作曲家の作品が審査に大きな比重を占める。カーチュンの解釈はいわば本家公認の、オーセンティックなものなのだ。

 日本フィルでも首席客演指揮者就任のお披露目公演となった2021年12月の定期での第5番を嚆矢として、22年5月には第4番を指揮。その後、23年10月の首席指揮者に就任して最初の定期では大作・第3番に挑み、さらに昨年5月には第9番と歩みを進めてきた。

 日本フィルも創立指揮者・渡邉曉雄の時代からマーラー演奏の伝統を持つオケだが、緻密な読みに基づきながらもフレッシュなカーチュンの演奏は回を重ねるごとに大きな反響を呼んでいる。

 大注目のシリーズは今回、第2番「復活」で折り返す。葬送行進曲風に始まり、舞曲風、スケルツォ風の楽章へと続き、第4楽章では独唱が神の存在をほのめかす。巨大な終楽章では最後の審判が下された後、二人のソリストと合唱が死者の復活と神の栄光を壮大に歌い上げる。

 ソプラノに吉田珠代、メゾソプラノに清水華澄というマーラー経験も豊富な百戦錬磨のベテラン勢を配し、合唱には日本フィルとの共演歴も長い上に近年評価を高めている東京音楽大学の合唱団が参加。自身の十八番である作曲家の初期の大作で、カーチュンがどんな起伏を持ったドラマを作り上げるのか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年2月号より)

カーチュン・ウォン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団
第768回 東京定期演奏会
2025.3/7(金)19:00、3/8(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp