
右:大谷康子 ©Yukisuke Fushimi
東京シティ・フィルは今年創立50周年を迎える。幸いなことに、楽団はアニバーサリーにふさわしい充実のときを迎えており、新年度のラインナップも多彩かつ大規模作品が並び、話題を集めている。その開幕の定期は、様々な節目の重なる意義深いプログラムが組まれた。
最初の注目はヴァイオリンの代表的名匠、大谷康子の登場。演奏活動に留まらず、テレビ番組MCなど精力的に活躍中の大谷も、同じく今年デビュー50周年。さらに、かつて東京シティ・フィルの黎明期に首席コンサートマスターを13年務めており、両者の50周年に再会の共演というこの上ない記念のステージとなる。この日はメンデルスゾーンの協奏曲とサラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」、ヴァイオリンの名曲2作を披露。彼女のアーティストとしてのエネルギーはますます増しており、圧巻のパフォーマンスになること間違いなし。
もう一つは、高関健の常任指揮者就任から10年を経て、11年目に入ること。この10年間での同楽団の顕著な向上ぶりは、筆者を含め各所で幾度も強調されてきた通り。その成果を踏まえた新たな年度の初回は、没後50年のショスタコーヴィチの聴きやすく楽しいバレエ音楽「ボルト」抜粋で開始し、メインはストラヴィンスキー「春の祭典」と、20世紀ロシアの傑作バレエ音楽2作を大枠に置く。ことに指揮者とオーケストラにとって重要な大作かつ難曲であり続ける「春の祭典」は、両者の現在地を示すには最高の作品。桜の季節の熱き「春祭」で、新たな節目を寿ぐ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年2月号より)
高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第378回 定期演奏会
2025.4/5(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
2025.2/10(月)発売
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp