プーランクのスペシャリスト鈴村真貴子のピアノ曲集第二弾は、「夜想曲集」にはじまり夜にまつわる作品を編んだ。心の奥底の喪失感を時に素直に、時には明るく覆い隠しているというのが鈴村のプーランク理解。快活な旋律の中にふっと現れるメランコリー、端正さを彩る洒脱な語り、不意を突いて鋭いきっさきをみせる狂気…弾むリズム、能弁に流れるメロディーのうちにプーランク独自のハーモニーや音感を捕まえ、さりげなくスポットを当てる。この演奏には作曲家への理解が音の解釈となって鮮やかに表現されているが、それは作品に沈潜しその音楽を血肉化してはじめて可能になるものだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年12月号より)
【information】
CD『フランシス・プーランク:ピアノ作品集 Vol.2 /鈴村真貴子』
プーランク:夜想曲集、「絹の音楽」より〈ワルツ〉、アルバムの頁、「ジャンヌの扇」より〈パストゥレル〉、フランセーズ—クロード・ジェルヴェーズ(16世紀)による—、バッハの名による即興ワルツ、2つの間奏曲、メランコリー、ナゼルの夕べ—ピアノのための組曲—
鈴村真貴子(ピアノ)
オクタヴィア・レコード
OVCT-00210 ¥3850(税込)