『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ2023年12月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
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今年も、毎年恒例の独OPERNWELT誌の年間最優秀賞(2021/22シーズン)が発表になっている。主要な受賞は、オペラハウスが昨年に続いてフランクフルト歌劇場、男声歌手がミヒャエル・フォッレ、演出家がドミトリー・チェルニアコフ、指揮者がこれまた2年連続のキリル・ペトレンコ、オーケストラがバイエルン州立管、作品がバイエルン州立歌劇場のプロコフィエフ「戦争と平和」、というところ。
さて、2024年は復活祭(イースター)が3月31日であるため、復活祭関連の音楽祭も3月20日過ぎくらいから続々開始される。
まずは、キリル・ペトレンコとベルリン・フィルによる「バーデン=バーデン復活祭音楽祭」。昨年話題となったR.シュトラウス「影のない女」は今夏NHK・BSでも放送されたが、2024年のオペラは同じR.シュトラウスの「エレクトラ」。題名役はニーナ・ステンメ、クリソテミス役は昨年の「影のない女」で皇后を歌ったエルザ・ファン・デン・ヒーヴァー、クリテムネストラ役は同じく乳母を歌ったミヒャエラ・シュスター…と昨年からの続編といった趣きの公演。オーケストラ・コンサートはもちろんベルリン・フィルの演奏だが、ペトレンコはミクネヴィチウテのジークリンデ、ジョヴァノヴィチのジークムント他が登場するワーグナー「ワルキューレ」第1幕をメインとする「ワーグナー・ガラ」や、バティアシヴィリがシベリウスのヴァイオリン協奏曲を演奏する公演を振り、他にソヒエフがブルックナーの交響曲第7番やリシエツキ独奏のベートーヴェン、ピアノ協奏曲第3番を指揮する。
一方の「ザルツブルク復活祭音楽祭」は、昨年から、年ごとに異なった指揮者とオーケストラが登場する方式に様変わりしたが、2024年の担当は、アントニオ・パッパーノ指揮するローマ・サンタ・チェチーリア国立アカデミー管。ということで、イタリア色が一気に濃くなり、オペラはポンキエッリの「ラ・ジョコンダ」(ネトレプコ、カウフマン出演)、オーケストラ・コンサートもボッケリーニ、レスピーギ、ヴェルディなどお国ものの作曲家の作品が並ぶ。客演指揮はフルシャ。取り上げるのはベルリオーズやマルティヌーとイタリア人作曲家ではないが、「ローマの謝肉祭」「イタリアのハロルド」「ピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画」と、イタリアゆかりの作品が選ばれている。
ベルリン州立歌劇場主催の「フェストターゲ2024」ではワーグナーの「リング」ツィクルス公演が行われ、チェルニアコフ演出、シャーガー、カンペなど歌手陣も賑やかだが、本来指揮をするはずであったろうバレンボイムがオペラ上演指揮からの引退を発表して、ここに登壇しないのは、やはり残念ではある。なお、メータは元気いっぱいで、ブルックナーの交響曲第8番をシュターツカペレ・ベルリンと演奏する。もう一つ、フランスのエクサン・プロヴァンスで行われる「エクサン・プロヴァンス復活祭音楽祭」も、ミンコフスキ指揮のヘンデルのオラトリオ「復活」、ロト指揮のマーラー「大地の歌」、マルコン指揮のバッハ「ヨハネ受難曲」、ソヒエフとヴァイオリンのルノー・カプソンとの共演など興味津々の公演が並ぶ。
音楽祭的な企画としては、ドレスデン・ゼンパーオーパーで行われる「リヒャルト・シュトラウス・ターゲ」にも要注目。ここでは、ティーレマン指揮のR.シュトラウス「影のない女」プレミエが最大の見もの。また、1926年に制作された映画「ばらの騎士」の2006年リメーク版にシュターツカペレ・ドレスデンが伴奏を付けて上演するというのは豪華な企画。
通常のオペラ公演では、バイエルン州立歌劇場とスペインのテアトロ・レアルで、ヴァインベルクの「パサジェルカ」が同じ月にプレミエとなるのが非常に興味深い。オーケストラではウィーン・フィルでのメータとアルゲリッチの共演、ラトル指揮ロンドン響のガーシュウィン中心の凝った選曲などが特に目を引く。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)