2024年11月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2024年8月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

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 昨年の11月コメントでもご紹介したことだが、例年11月というのは、ヨーロッパのオーケストラが、アジアやアメリカ方面など大規模海外ツアーを行うことが慣例的に多い。今年も、ベルリン・フィル(指揮ペトレンコ)やコンセルトヘボウ管(指揮マケラ)がアメリカツアーを行い、ウィーン・フィル(指揮ネルソンス)、バイエルン放送響(指揮ラトル)、ミュンヘン・フィル(指揮ソヒエフ)などが日本を含むアジア・ツアーを行う。そのため、ツアーに先立つ現地での公演は、ほとんどの場合はツアー演目の予行演習的な内容となるが、その中で異彩を放つのが11月第1週目のバイエルン放送響の演目。何とワーグナー「トリスタンとイゾルデ」の2幕だけを演奏会形式でラトルが振る、という嬉しいような中途半端なような公演。どうせなら、1981年にこのオケでバーンスタインが行った、1幕ずつ3回の「トリスタン」全曲公演にしたらいいのに…と思うが、それにはツアー直前のこの忙しい時期にはとても無理。全曲を意識しない、あくまで「2幕」だけのコンサートというコンセプトなのだろうが、いずれにしてもダヴィドセンの歌うイゾルデが大いに聴きものなのは確かだ。

 一方、コンセルトヘボウ管に帯同してアメリカ・ツアーを行うクラウス・マケラの評価が難しい。数十年に一度の天才として颯爽とデビューした後、ベルリン・フィルとの初共演で事実上大失敗(多くのマスコミ報道などによる)し、手厳しい批評も珍しくなくなっていたマケラだが、新シーズンにはベルリン・フィルにも復帰(バーデン=バーデン復活祭音楽祭)し、ウィーン・フィルにも呼ばれている(12月)。この急激な再起ぶりがかえって謎を呼んでしまうが、この11月も彼は、パリ管、コンセルトヘボウ管、ロンドン響と多忙を極めている。本欄でも一時期◎印を付けるのを回避していたが、この謎の再起故の興味という意味合いで、再び◎印を付け始めている。

 ところで、相変わらず他と違った企画魂を発揮しているのがエサ=ペッカ・サロネン。パリ管でマーラーの交響曲第2番「復活」を振るのは珍しくないとしても、演奏会場が通常のフィルハーモニー・ド・パリに隣接したヴィレット・グランド・ホールという多目的ホールだということ。ここで、カステルッチの演出付で上演するのだという。意欲は買うが、演出が逆効果にならないことを祈るばかりだ。

 他にオーケストラでは、ベルリン州立歌劇場音楽監督就任後初めてシュターツカペレ・ベルリンをティーレマンが振る演奏会、リゲティのポエム・サンフォニック(100台の機械式メトロノームのための)が演奏されるコーミッシェ・オーパー管の演奏会、ベルリン・ドイツ響のティチアーティお別れコンサート、メッツマッハー=NDRエルプフィルのシェーンベルク「ヤコブの梯子」、プッチーニの珍曲ばかりを並べたエッセン・フィル等々、まだまだ面白そうなものはたくさんある。

 さてオペラの話題が後になってしまったが、11月に注目すべきは、改装なったアン・デア・ウィーン劇場でのシューマン「楽園とペリ」の演出付上演(シュレキーテ指揮)、シャーガー、ニールンドの出演するベルリン州立歌劇場のR.シュトラウス「影のない女」、ケルン歌劇場でのハイドン「天地創造」(ミンコフスキ指揮)、フランクフルト歌劇場のベルク「ルル」プレミエ(グックアイス指揮)、バイエルン州立歌劇場でのワーグナー「ラインの黄金」とヴァインベルク2作品上演、チューリヒ歌劇場でのシュニトケ「愚者との生活」、ミラノ・スカラ座でのワーグナー「ラインの黄金」(ティーレマン指揮)、フェニーチェ歌劇場のヴェルディ「オテロ」、ナポリ・サンカルロ歌劇場のドヴォルザーク「ルサルカ」(グリゴリアン出演)、英国ロイヤル・オペラのオッフェンバック「ホフマン物語」といったところだろうか。これ以外では、バーデン=バーデン秋の音楽祭でのヘンゲルブロックの活躍振りが目を奪う。

(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)