2024年10月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2024年7月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

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 要注目!!という点で言えば、10月のハイライトは断然ミラノ・スカラ座だろう。何といってもペトレンコ指揮のR.シュトラウス「ばらの騎士」とティーレマン指揮のワーグナー「ラインの黄金」(新リング・ツィクルス)が揃い踏みするからだ。音楽監督のシャイーを差し置いて申し訳ないが、この2人の客演指揮者の登場はやはり強烈。前者ではストヤノヴァのマルシャリン、後者ではフォッレのヴォータン、と手堅いながらも歌手陣も充実。

 また、来シーズンは、スカラ座以外でもワーグナー「リング」の新演出が続々登場する。10月はバーゼル歌劇場の「ジークフリート」と「神々の黄昏」(ノット指揮)。昨年からすでに上演されている前半2作(「ラインの黄金」「ワルキューレ」)が特に音楽通の間で話題を呼び、今秋の後半2作の期待値も高くなっている。演出のベネディクト・フォン・ペーター(生粋のドイツ人)は、ペーター・コンヴィチュニーのアシスタントを務めていた経歴もある才人肌。この「リング」は、来年5-6月にツィクルス上演もあるが、参考ながら、師匠格のコンヴィチュニー自身の「リング」もドルトムント劇場で来年5月にツィクルス上演される。いやはや大変な「リング」攻勢だ。ちなみに、バイエルン州立歌劇場でもトビアス・クラッツァー演出の「ラインの黄金」で「リング」新ツィクルスがスタートする。ああ、ペトレンコがいたら…などといらぬ妄想をしてしまうが、現音楽監督のユロフスキーの手腕も大いに期待できる。

 ワーグナー以外のオペラの話題としては、アン・デア・ウィーン劇場が改修成ってついに新劇場としてオープンすることだろう。演出家のシュテファン・ヘアハイムが鳴り物入りでこの劇場のインテンダントになった途端に大改修工事に突入。別会場で不本意な演出を強いられたかもしれないヘアハイムだが、この10月にやっと本来の劇場で新演出(モーツァルト「イドメネオ」)を出す。なお、これに先立つウィーン響による「アン・デア・ウィーン劇場再開記念式」の公演には、何とピアノの藤田真央がゲストとして招かれた。相変わらずの活躍ぶりだ。その他の新演出オペラとしては、ベルリン・ドイツ・オペラのヴェルディ「ナブッコ」、エッセン歌劇場のモーツァルト「魔笛」、フランクフルト歌劇場のヘンツェ「ホンブルクの公子」(森内剛指揮)、シュトゥットガルト歌劇場のヒンデミット「聖スザンナ」、オランダ国立オペラのブリテン「ピーター・グライムズ」、メトロポリタン歌劇場のゴリホフ「アイナダマール」などの注目作が並ぶ。レギュラー公演では、グリゴリアンの出演するヴェルディ「ドン・カルロ」(ウィーン国立歌劇場)、シャーガー、ニールンドと歌手のそろったR.シュトラウス「影のない女」(ベルリン州立歌劇場)、ハンブルク州立歌劇場のムソルグスキー「ボリス・ゴドゥノフ」(ナガノ指揮)、同じくナガノ指揮のリゲティ「ル・グラン・マカーブル」(バイエルン州立歌劇場)、バッティストーニ指揮のボーイト「メフィストーフェレ」(ドレスデン・ゼンパーオーパー)等々。ウィーン国立歌劇場のクルターグ「エンドゲーム」、パリ・オペラ・コミークのG.ベンジャミン「Picture a day like this」など、現代オペラにも要注目公演は少なくない。

 前月から続く音楽祭では、「リンツ国際ブルックナー・フェスティバル」と「パルマ・ヴェルディ・フェスティバル」の各公演が要注目。

 オーケストラ関係では、11月の来日公演前のソヒエフ指揮ミュンヘン・フィル、音楽監督としての最初のオーケストラ公演となるティーレマン指揮のシュターツカペレ・ベルリン、バレンボイムとアルゲリッチが共演するベルリン・フィル、ウェルザー=メストの客演するライプツィヒ・ゲヴァントハウス管やバイエルン放送響、珍しくもムーティが登場するフランス国立管、そして八面六臂の活躍を見せるフルシャ指揮のバイエルン放送響やバンベルク響などがどれも要注目公演。

(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)