東京・春・音楽祭 2024 ラインナップ発表!

20周年にふさわしい豪華プログラムが上野で花開く

文:飯尾洋一

 来春も上野を舞台に「東京・春・音楽祭」が開催される。すっかり季節の風物詩として定着した同音楽祭だが、2005年に「東京のオペラの森」としてスタートして以来、今回でいよいよ20回目を迎える。節目の年とあって、例年以上に力の入ったプログラムが組まれた。開催期間は24年3月15日から4月21日まで。東京文化会館を中心に、上野の美術館や博物館ほかで、大小さまざまな規模の公演が連日開催される。

2023年《ニュルンベルクのマイスタージンガー》 (c)池上直哉

 最大の注目点は演奏会形式で上演されるオペラ4演目。音楽祭の目玉となるワーグナー・シリーズでは、名匠マレク・ヤノフスキ指揮NHK交響楽団により楽劇《トリスタンとイゾルデ》がとりあげられる。ヤノフスキほどN響から張りつめたサウンドを引き出してくれる指揮者はいない。スチュアート・スケルトン、ビルギッテ・クリステンセンらの歌手陣とともに、最高水準のワーグナーを聴かせてくれることだろう。

左より:マレク・ヤノフスキ (c)Felix Broede、スチュアート・スケルトン (c)Sim Canetty-Clarke、ビルギッテ・クリステンセン

 さらにリッカルド・ムーティは東京春祭オーケストラを率いて、ヴェルディの《アイーダ》を指揮する。音楽祭と深い絆を築いてきたムーティは、これまでも同オーケストラを指揮して、たびたび語り草になるような名演を披露してきた。今回もイタリア・オペラの真髄を伝えてくれるはず。題名役は欧州の檜舞台で活躍するマリア・ホセ・シーリが務める。なお、例年行われていたムーティによる「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」は9月に別途開催されることになった。

左:リッカルド・ムーティ (c)Todd Rosenberg Photography
右:マリア・ホセ・シーリ (c)Michele Monasta

 恒例、プッチーニ・シリーズで上演されるのは人気作《ラ・ボエーム》。ステファン・ポップのロドルフォ、セレーネ・ザネッティのミミらが永遠の青春群像劇をくりひろげる。指揮はピエール・ジョルジョ・モランディ。今回はオーケストラに東京交響楽団が起用される。東響は新国立劇場のピットに入るなど、オペラについては経験豊富なオーケストラだ。

左:ピエール・ジョルジョ・モランディ (c)Elena Cherkashyna
右:ステファン・ポップ (c)Gigi+Melinte+Visuals

 さらにセバスティアン・ヴァイグレ指揮読売日本交響楽団がリヒャルト・シュトラウスの《エレクトラ》を上演する。こちらも大きな話題を呼びそうな公演だ。常任指揮者として読響との関係を着実に深化させてきたヴァイグレだけに期待は高い。題名役は屈指のドラマティック・ソプラノ、エレーナ・パンクラトヴァ。

左:セバスティアン・ヴァイグレ (c)読売日本交響楽団
右:エレーナ・パンクラトヴァ (c)Vitaly Zapryagaev

 これら4公演に加えて、ヤノフスキ指揮N響はワーグナー『ニーベルングの指環』ガラ・コンサートを開く。声楽陣も入り、全4部の未曽有の大作からエッセンスが凝縮される。また合唱の芸術シリーズとして、ローター・ケーニヒス指揮東京都交響楽団と東京オペラシンガーズが、ブルックナーのミサ曲第3番を演奏して、作曲者生誕200年を祝う。重厚なラインナップがそろった。

ローター・ケーニヒス

 リサイタルや室内楽も多彩だ。ベートーヴェンの大家として知られるルドルフ・ブッフビンダーが、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲を全7回のシリーズで演奏する。巨匠の至芸を堪能する貴重な機会となる。
 アンサンブル・アンテルコンタンポランの来日も目をひく。ピエール・ブーレーズがパリに設立した最高峰の現代音楽専門室内アンサンブルが2夜にわたる連続公演を行う。第一夜はクセナキス、ヴァレーズ、リゲティなど20世紀における現代音楽の名作を、第二夜は欧州の最新音楽シーンを届ける。

左:ルドルフ・ブッフビンダー (c)Marco Borggreve
右:アンサンブル・アンテルコンタンポラン (c)Cosimo Trimboli

 トップレベルの歌手たちによる歌曲シリーズもこの音楽祭の魅力のひとつ。ソプラノのレネケ・ルイテンによるシューマンとR.シュトラウス他、バスのルネ・パーペによるドヴォルザーク、ムソルグスキー他、バリトンのコンスタンティン・クリンメルによるシューベルト「美しき水車屋の娘」、メゾソプラノのオッカ・フォン・デア・ダメラウによるベルク、マーラー他のプログラムが並ぶ。

左より:ルネ・パーペ、コンスタンティン・クリンメル、オッカ・フォン・デア・ダメラウ (c) Simon Pauly

 生誕150年を迎えるシェーンベルクにも光が当てられる。20世紀以降の作品を得意とするフランスのディオティマ弦楽四重奏団が来日し、シェーンベルクの弦楽四重奏曲全曲を演奏する。ヴィオラの安達真理とチェロの中実穂が加わった弦楽六重奏曲「浄められた夜」も含まれる。計6時間におよぶ長大な公演はシェーンベルク・イヤーのハイライトになりそうだ。

ディオティマ弦楽四重奏団 (c)Michel_Nguyen_photographe

 上野を舞台にした東京春祭ならではの企画がミュージアム・コンサート。今回も東京国立博物館、国立科学博物館、東京都美術館、国立西洋美術館、上野の森美術館で公演が開催される。ミュージアム・コンサートの魅力は非日常の空間と、奏者との距離の近さ。「東博でバッハ」シリーズでは、ヴァイオリンの成田達輝、ギターの鈴木大介、チェロの新倉瞳らが登場する。バッハの音楽にふさわしい親密な空間が新鮮な喜びをもたらしてくれることだろう。

 そのほか、マラソン・コンサート、子どものためのワーグナー、上野の街を舞台に展開する無料のミニ・コンサート「桜の街の音楽会」といった名物企画も健在だ。20周年を記念したプレゼント企画や、バラエティに富んだチケット購入プランもあるという。まさに百花繚乱の春が到来する。

東京・春・音楽祭 2024 【配信あり】
2024.3/15(金) 〜4/21(日)
東京文化会館、東京藝術大学奏楽堂(大学構内)、旧東京音楽学校奏楽堂、国立科学博物館、東京国立博物館、東京都美術館、国立西洋美術館、上野の森美術館 他
問 東京・春・音楽祭サポートデスク050-3496-0202

https://www.tokyo-harusai.com
※プログラム、チケット発売日などの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。