鈴木秀美(指揮/神戸市室内管弦楽団音楽監督)

満を持して挑む、ハイドン晩年の大作

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 神戸出身の鈴木秀美が、故郷の神戸市室内管弦楽団の音楽監督に就任して2年。就任後の12月にヘンデルの「メサイア」で大成功を収めた神戸市混声合唱団とのコンビで、今年はハイドンの「天地創造」に挑戦する。

 「最初からいきなり『天地創造』というわけにはいかないので、まず『メサイア』を取り上げました。音楽監督である佐藤正浩さんの指導を受けた合唱団は素晴らしかったし、オーケストラもティンパニやトランペット、ホルンにピリオド楽器を取り入れ、各楽器で音を混ぜ合わせる効果を耳でわかってくれたように思います。

 『天地創造』は、私が首席奏者を務めていた『ラ・プティット・バンド』が1993年に初来日した時、神戸で最初に演奏会を開き、そこで披露した作品なんです。だから神戸で演奏できるのは嬉しいですね。『ラ・プティット・バンド』の指揮者だったシギスヴァルト・クイケンや、私が所属していた『18世紀オーケストラ』を指揮していたブリュッヘンもちょうどハイドンに傾倒していた頃で、彼らからハイドンの面白さを教えてもらいました」

 「天地創造」は、ハイドンの集大成的な作品だという。

 「まず、全曲を通してポジティヴです。悲痛なところがなくてこれだけの長さを書けるのはすごい。『天地創造』はいろいろなものが誕生する物語ですが、それに対する想像力もすごいですよね。見たことのない動物を音楽で描いたりするわけですから。音が先にあって、その後に言葉が続くのも特徴ですね。

 ハイドンはある時期から音楽がシンプルになっていくのですが、『天地創造』も曲の規模に比べて書かれている量は少ない。でも読み取るべき要素はたくさんある。それ以前の音楽を知っていることが必要です。
 自然への畏怖に満ちている曲でもあります。神様のやっていることは素晴らしいという感謝の気持ちが基本にある」

 「天地創造」はロンドンでの経験から生まれた。

 「ハイドンがロンドンに来たのはまさに天の配剤。エステルハージ侯も皇帝ヨーゼフ2世も亡くなって完全にフリーだった彼を、興行師のザロモンがスカウトしました。当時のハイドンは大きなオーケストラはまだそれほど経験がなくても歌手・声楽の扱いはよく分かっていたはず。まさに天の配剤で生まれた名曲ですね」

 ヴァイオリンの佐藤俊介をソリストに迎える11月定期も練られたプログラム。ハイドンとバルトークという、同じ地域で活動しながら違うタイプの音楽を書いた二人と、「何かとハイドンと比較される」モーツァルトの協奏曲という組み合わせはとても洒落ている。毎回のコンサートが注目のオーケストラである。
取材・文:加藤浩子
(ぶらあぼ2023年11月号より)

神戸文化ホール開館50周年記念事業 ハイドン:オラトリオ「天地創造」
2023.12/16(土)14:00 神戸文化ホール
神戸市室内管弦楽団 第160回 定期演奏会「ヴァイオリンの魔法」
2023.11/11(土)15:00 神戸文化ホール
問:神戸文化ホールプレイガイド078-351-3349
https://www.kobe-bunka.jp/hall/