天才たちののこした円熟期の名曲から、その足跡をたどる
横山幸雄が毎年、春にショパン、秋にベートーヴェンと、自身にとって核となる二人の作曲家を取り上げる、恒例の演奏会シリーズ。今年はその両テーマを融合、9月のベートーヴェン・プラス Vol.9では、朝から夕方までの5時間をかけ、二人の円熟期から晩年の作品を演奏する。
名曲揃いなので、音楽に詳しい方もそうでない方も楽しめる内容だが、音楽好きに特に注目してほしいのは、やはり両作曲家の楽曲の組み合わせだ。
例えばベートーヴェンが30代で書いたピアノ・ソナタ「熱情」や「テレーゼ」は、ショパンもまた30代で書いた傑作であるバラード第4番や「英雄ポロネーズ」と並べられる。またショパンの最後のピアノ・ソナタである第3番は、ベートーヴェンが生涯をかけてたどり着いた第32番のピアノ・ソナタとともに演奏される。それぞれの作曲家が目指したもの、ピアノという楽器に求めたものの違いが感じられるかもしれない。おなじみのトークもあるので、作曲の背景に加えてプログラミングの意図も知ることができるだろう。
2010年の企画以来、ショパンの全曲演奏会が注目されてきた横山だが、20年には、今度はベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲を2日間で演奏する驚きの企画も成し遂げた。二人の作曲家の全体像を一気に把握したことで手に入れた深い理解は、こうした両者を組み合わせたプログラムでも生かされ、聴き手に多くの発見をもたらしてくれるだろう。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2023年9月号より)
2023.9/23(土・祝)11:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
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