気鋭のヴィオリストが新たな扉を開く
国内外のコンクールに果敢に挑戦して飛躍する、若手弦楽器奏者の活躍が目覚ましい。6月の東京オペラシティ主催のリサイタルシリーズ「B→C」に登場するヴィオラの田原綾子もそのひとり。桐朋学園大学および同大学院大学、パリ・エコールノルマル音楽院、デトモルト音楽大学で学び、東京音楽コンクール弦楽部門第1位、ルーマニア国際音楽コンクール全部門グランプリ受賞。ソリスト、室内楽奏者として縦横無尽の活躍をみせている。
プログラムには難曲が並ぶ。田原は「難しさと同じくらい思い出深く、大好きな曲」ばかりと語る。西村朗「アムリタ(不死の霊薬)」は、昨年の東京国際ヴィオラコンクールの課題曲。演奏効果抜群の作品だ。武満徹「鳥が道に降りてきた」では、ピアノ(實川風)と対話し、ヴィオラは風に誘われ舞い上がる。新作は、彼女と同世代の2人の作曲家に委嘱した。田原が「閃きとパンチのある個性的な表現」が魅力と語る梅本佑利、同窓の森円花も期待大。同時代音楽のスペシャリストで名ヴィオラ奏者のガース・ノックス「フーガ・リブレ」も楽しみだ。
さらに、ヴュータンの優美なソナタや後期ロマン派の香りが漂う名曲、ヒンデミットのソナタ op.11-4では豊かな音色を聴かせてくれるだろう。そして、チェンバロとの演奏では初めてというJ.S.バッハのヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第1番は、共演の實川もチェンバロ初挑戦と、常に新しい扉を開いていく。「次世代のホープ」と呼び声が高い田原のしなやかな感性が光る一夜だ。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2023年6月号より)
2023.6/13(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp