気鋭の若手デュオが生誕150年のアニバーサリーを寿ぐ
ラフマニノフをライフワークとするチェロ奏者・伊藤悠貴と、デュオ・パートナーとして活動するハープ奏者の中村愛が、凝った選曲のラフマニノフ生誕150年プログラムを聴かせる。伊藤曰く「作曲家ラフマニノフができるまで」。
前半はラフマニノフが影響を受けた作曲家の系譜だ。バッハ、チャイコフスキーとラフマニノフの関連は言わずもがなだが、シューベルト、シューマンはちょっと意表。しかしラフマニノフは歌曲を書くにあたってシューベルトをつぶさに研究しているし、ピアノ曲にはシューマンの色合いが強く出ているという。ラフマニノフ・マニアの伊藤ならではのチョイスだ。
後半は歌曲中心。伊藤のラフマニノフ愛の根本は、ラフマニノフが歌の作曲家だから。初期作品から後期作品をピックアップしてクロノロジカルに配置したことで、美しいメロディのロマン派的な作風が、象徴主義的な、響きそのものを重視した作風に変遷していく様子を辿ることができる。歌う場合はロシア語詞というハードルもあるので、言葉を超えて表現できる器楽のほうが、人の声の奥底に隠れている器楽性、象徴性に光を当てることができるという。
チェロとハープというレアな編成の魅力と可能性にも気づかされるはずだ。
文:宮本明
浜離宮アフタヌーンコンサート
伊藤悠貴 & 中村愛 デュオリサイタル
2023.6/29(木)13:30 浜離宮朝日ホール
●出演
伊藤悠貴(チェロ)
中村愛(ハープ)
●曲目
バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 BWV1007 《チェロ独奏》
シューベルト(アルベルティ編):セレナーデ D957-4(歌曲集「白鳥の歌」より第4番)《ハープ独奏》
シューマン:3つのロマンス op.94
チャイコフスキー(ルパート編):花のワルツ op.71a (バレエ音楽「くるみ割り人形」より)
ラフマニノフ(中村愛編):前奏曲「鐘」 op.3-2《ハープ独奏》
ラフマニノフ(伊藤悠貴編):曳舟人夫の歌
ラフマニノフ(伊藤編) :作品番号付きの歌曲集より
ああ、私の畑よ op.4-5 、睡蓮 op.8-1 、小島 op.14-2 、リラの花 op.21-5、キリストは蘇り給いぬ op.26-6 、ヴォカリーズ op.34-14 、雛菊 op.38-3
ラフマニノフ(伊藤編):交響曲第2番より第3楽章「アダージョ」op.27
●料金
全席指定:5,000円
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/