昨年5月に惜しまれつつ他界したイギリスのフルートの巨匠ウィリアム・ベネットと、その最後の弟子の一人で、韓国出身のミシェル・チョイが、子どもたちや疎外感に苦しむ人々に向けて、音楽に耳を傾けることで「自分たちは愛されている」と実感できるよう、優しく心に響く調べを厳選し、綴ったアルバム。ベネットが紡いだ、最後の音でもある。師弟の共演では、温かな音色と、ヴィブラートひとつにまで及ぶ阿吽の呼吸で聴く者を魅了。チョイがジャズ・ピアノ・トリオと共演する、人気の高いクロード・ボリングの組曲では、グルーヴ感に満ちたチャーミングな妙技を披露している。
文：笹田和人
（ぶらあぼ2023年6月号より）
【information】
CD『世界のすべての子どもたちに／ミシェル・チョイ＆ウィリアム・ベネット』
J.S.バッハ：アヴェ・マリア（グノー編）、G線上のアリア／ドヴォルザーク：ユーモレスク第7番、スラヴ舞曲「ドゥムカ」／ホルスト：木枯らし寒く吹きすさび／ボリング：「フルートとジャズトリオのための組曲」より〈アイリッシュの女〉〈フガーチェ〉〈センチメンタル〉〈バロック＆ブルー〉／アイルランド民謡：こころみの世にあれど
ミシェル・チョイ ウィリアム・ベネット（以上フルート） 他
コジマ録音
ALCD-9252 ￥3080（税込）