ロマン派ピリオド楽器演奏が新局面を迎えつつあることを実感する一枚だ。レールタウヴェル率いるニュー・フィルハーモニー・ユトレヒトのブラームス。「交響曲第4番」冒頭のため息音型を弦楽器がポルタメントをかけて奏する瞬間から、19世紀の演奏世界に引き込まれる。ポルタメントとピンポイントで用いられるヴィブラートが情感の担い手となり、テンポは自在に流動して感情の起伏に生気を吹き込む。ピリオド楽器それぞれの色彩が際立つ。ヴァイオリン協奏曲は佐藤俊介を独奏に迎え、上記の奏法を自在に駆使する独奏者とオーケストラが溶け合い、言葉の最良の意味で“独奏を伴う交響曲”の趣。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2026年11月号より)

【information】
CD『ブラームス:ヴァイオリン協奏曲&交響曲第4番/レールタウヴェル&ニュー・フィルハーモニー・ユトレヒト 他』
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲、交響曲第4番
ヨハネス・レールタウヴェル(指揮)
ニュー・フィルハーモニー・ユトレヒト
佐藤俊介(ヴァイオリン)
Glaux Records/東京エムプラス
GL 006S ¥オープン価格

矢澤孝樹 Takaki Yazawa
1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。
