中 恵菜(ヴィオラ/カルテット・アマービレ)

「“おうち”のような」仲間たちと追究するシリーズで名手と初共演

(c)T.Tairadate

 室内楽愛好家ならずとも「カルテット・アマービレ」の名を見ることは多いだろう。2016年ARDミュンヘン国際音楽コンクール第3位という快挙から、近年はマルタ・アルゲリッチをはじめ世界の巨匠たちとの共演に至り、その快進撃は際立つ。地歩を固める公演も継続しており、2020年開始のHakuju Hall「BRAHMS Plus」は、ブラームスを軸に、巨匠や先輩奏者がゲストとして“プラス”される重要なシリーズ。同団ヴィオラで、新日本フィルの首席奏者やソリストとしても活躍する中恵菜に、その意義について聞いた。

 「ブラームスには室内楽の名作がたくさんあり、それをHakuju Hallの温かい響きの中で弾きたいと話しあったのがきっかけでした。“プラス”シリーズは、すばらしい方をお迎えして新しいアイディアを一緒に作り上げるというコンセプトで、常設の団体にとっては新風を入れられる貴重な経験になります。特に、お世話になった先生方とご一緒させていただくことはアマービレにとって一つの夢で、初回を堤剛先生と磯村和英先生のご出演で叶えられたのは本当に嬉しかったです」

 今年7月公演のゲストはヴィオラの村上淳一郎。ケルン放送響のソロ奏者を経て、現在はN響の首席奏者で、その豊潤な音色と活力あふれる演奏姿で知られる名手だ。「私も本当に尊敬するヴィオリストです! 実は村上さんとはメンバー全員一度もご一緒したことがなくて、すごくワクワクしています」と中も待望の共演を喜ぶ。

 「プログラムは4曲です。四重奏曲は、渋くも美しいコズマ(武満徹編曲)『枯葉』と、チェロが活躍するモーツァルト第21番『プロシャ王第1番』です。五重奏曲は、せっかくの村上さんとの共演ですし、最もよく弾かれる作品のひとつであるモーツァルトの第4番と、ブラームスはメンバーも大好きな第1番を選びました。第1ヴィオラはモーツァルトが村上さん、ブラームスが私です。村上さんのアイディアを伺えるのが楽しみでなりません」

 ヴィオラについて「内声がちゃんとしていなければ室内楽は成り立たず、そういう縁の下の力持ちの役割に魅力を感じます」と語る中。2015年結成のカルテット・アマービレは、彼女にとって、桐朋学園の高校や大学で出会った仲間とともに、大切な時間を過ごせる場でもあるという。

 「アマービレはもう家族同然というか、“おうち”のような存在です(笑)。音楽を真剣に追究しながらも、メンバーといろんなことを包み隠さず話すこともできるのは、すごく幸せなことです。これからもこの4人でカルテットの世界を突き詰めていきたいです」
取材・文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年5月号より)

カルテット・アマービレ BRAHMS Plus〈Ⅳ〉
2023.7/11(火)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 
https://hakujuhall.jp